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4. マーケティング・マネジメント

マーケティング・マネジメントとは

Section titled “マーケティング・マネジメントとは”

「顧客に喜ばれる商品を考えたが、必要な数量を用意できなかった」「売上は増えたのに、値引きや配送費で利益が減った」。こうした問題を避けるには、商品や広告を考えるだけでなく、市場を調べ、計画を立て、関係部門と実行し、結果を見直す必要があります。

マーケティング・マネジメントは、顧客に価値を届けるための活動を、分析・計画・実行・評価・改善の流れで管理することです。第3回の戦略的マーケティングで「誰に、どんな価値を届けるか」を選び、本記事ではそれを実行可能な販売計画や日々の管理に落とし込みます。

この記事では、地域の飲食店に食材を卸す架空の青葉商店が、小口配送サービスを検討する例を使います。計算は説明用に単純化しており、実際の判断では価格、能力、費用などの条件を確認します。

1. マーケティング環境を把握する

Section titled “1. マーケティング環境を把握する”

企業の判断は、外部の変化と自社の能力の両方に影響されます。外部環境は企業が直接変えにくい要因で、内部環境は自社の資源や体制です。

区分確認すること青葉商店の例
マクロ環境経済・社会・技術・制度・自然環境など物価上昇、配送人材の不足、注文のデジタル化
ミクロ環境顧客、競合、仕入先、流通業者など飲食店の注文頻度、競合の納期、仕入先の供給能力
内部環境人材、設備、資金、データ、組織仕分け能力、配送車両、受注情報の正確さ

環境の変化を列挙するだけでは管理になりません。「何が起きると、どの顧客・数量・費用に影響するか」「いつ、どのデータで確かめるか」まで決めます。分析方法は環境分析とSWOTを参照してください。

段階行うこと青葉商店の例
分析顧客、競合、自社の状態を調べる小規模店が求める納期と注文量を聞く
計画対象顧客、目標、施策、予算を決める月間注文数、単価、配送条件を設定する
実行部門や取引先と役割・期限を合わせる営業、仕入、倉庫、配送が試験運用する
評価実績を計画・前提と比べ、差異を分ける数量、値引き、納期、顧客別利益を確認する
改善原因を検討し、施策と計画を更新する注文締切や配送頻度を見直す

数値目標は、結果の売上だけでなく、その前提となる行動や顧客の経験も組み合わせます。例えば注文数が増えても納期遅れや欠品が増えていれば、施策は長続きしないかもしれません。

3. マーケティング・ミックス:施策を組み合わせる

Section titled “3. マーケティング・ミックス:施策を組み合わせる”

マーケティング・ミックスは、選んだ顧客に価値を届けるため、複数の施策を整合させることです。代表的な4Pは企業側から施策を整理する枠組みです。AMAの解説も参照してください。

4P検討すること小口配送サービスの例
Product:製品商品・サービス、品質、品ぞろえ必要な量だけ注文でき、納期が分かる
Price:価格販売価格、割引、取引条件小口対応の費用も考慮し、配送条件を明確にする
Place:流通販売経路、受取・配送方法注文受付と配送地域、締切時刻を決める
Promotion:販促広告、営業、情報提供対象店舗にサービス内容と条件を正確に伝える

4Cは、顧客の視点から施策を確かめるときに使います。代表的には、顧客価値(Customer value)、顧客が負担する費用(Cost)、利便性(Convenience)、対話・情報交換(Communication)です。4Pと対応させて考えると、価格だけでなく注文や受取にかかる時間も顧客の負担だと分かります。用語や対応づけには複数の整理があります。

7Pは、特にサービスの設計で4Pに人(People)、提供の過程(Process)、サービスを判断する手掛かりとなる物的証拠(Physical evidence)を加える考え方です。例えば配送担当者の対応、注文から配達までの流れ、注文確認画面や配送状況の表示を検討します。

パターン製品・価格・流通・販促の組み合わせ注意点
日常の小口取引定番品、通常価格、決まった配送日、既存顧客への案内利便性と配送効率の両立
緊急配送短納期、追加料金、対象地域・締切を限定、条件を明示顧客価値に見合う価格と配送能力
定期注文必要量の予約、契約条件、まとめ配送、導入支援需要変動やキャンセル条件

施策は単独で評価できません。短納期を宣伝しても、配送能力がなければ約束を守れず、顧客満足を損ないます。対象顧客の課題、価格、社内の活動が一致するかを確かめます。

4. 需要予測:将来の需要を見積もる

Section titled “4. 需要予測:将来の需要を見積もる”

需要予測は、将来の顧客の購入・利用を見積もり、仕入・人員・販売・資金の計画を立てるために使います。予測は実現すると約束する数値ではなく、前提のある見積もりです。販売目標や販売計画とも区別します。

方法使い方・向いている場面注意点
過去実績の比較前年同月や季節ごとの販売を比べる価格変更、欠品、顧客構成の変化に注意
移動平均直近数期間の平均で短期の傾向を見る季節性や急変をそのまま予測できない
調査・聞き取り顧客の予定や営業現場の情報を集める希望と実際の購入は異なり、回答に偏りもある
回帰などの統計的方法需要と価格、来客数、天候などの関係を検討相関だけで因果と決めず、データの範囲・前提を確認
シナリオ基準・上振れ・下振れの条件を作る確率が不明な場合は、確定した見込みとして扱わない

小口注文数が4月90件、5月120件、6月120件だったとします。単純な3か月移動平均による7月の参考値は次のとおりです。

(90 + 120 + 120)÷ 3 = 110件

110件は直近の平均であり、7月に必ず110件の注文が入るという意味ではありません。休日、季節、販促、価格変更、能力や欠品を確認し、必要なら前年同月や顧客への聞き取りで補います。品切れで販売できなかった分は、販売実績に表れない潜在需要があることにも注意します。詳しくは計画のための予想技法を参照してください。

販売計画は、需要予測と事業の目標を踏まえ、何を・誰に・いくつ・いくらで・いつ・どう売るかを具体化したものです。数量、単価、値引き、販路、活動、人員、費用を結び付けます。

  1. 商品・顧客・地域・月別など、意思決定に必要な単位を決める。
  2. 需要予測、営業情報、契約状況を照らし合わせ、販売数量を設定する。
  3. 単価・値引き・返品を考慮し、売上と限界利益を試算する。
  4. 仕入、作業、配送、人員、資金の制約を確認し、実行可能な計画に直す。
  5. 担当者、期限、予算、測定方法、見直し条件を定める。

計画を100件、1件当たり売上8,000円とすると、計画売上は80万円です。実績が110件、平均売上7,500円なら、実績売上は82万5,000円で計画より2万5,000円増えています。

差異の分解計算売上への影響
数量の変化(110 − 100)件 × 計画単価8,000円+8万円
単価の変化(7,500 − 8,000)円 × 実績110件−5万5,000円
合計8万円 − 5万5,000円+2万5,000円

この分解は、数量差を計画単価、単価差を実績数量で評価する一例です。売上が増えた理由を検討する入口であり、値引き、商品構成、顧客構成などを調べなければ単価低下の原因は分かりません。売上差異は利益差異とも別です。利益計画・予算編成も参照してください。

6. 各機能部門との関係とマーケティング組織

Section titled “6. 各機能部門との関係とマーケティング組織”

マーケティングの約束は、営業だけで実現できません。部門ごとに異なる目標を共有し、顧客価値と費用を同時に考えます。

部門連携する内容起こりやすい食い違い
営業・販売顧客の声、受注条件、販売予測売上優先の値引きで利益が減る
仕入・調達調達量、価格、品質、納期大量仕入れで単価は下がるが在庫や廃棄が増える
製造・物流作業能力、在庫、配送条件短納期の約束が現場の能力を超える
財務・経理利益、投資、運転資金、回収売上増でも入金前に資金が不足する
情報システム注文・顧客・販売データの連携部門ごとに顧客や売上の定義が異なる
人事要員、教育、評価制度件数だけの評価で不適切な受注が増える

マーケティング組織の形には、広告・調査などを分ける機能別、製品ごとに担当を置く製品別、地域ごとの地域別、顧客層ごとの市場・顧客別などがあります。小規模企業では一人が複数の役割を担うこともあります。製品別は商品に詳しくなりやすい一方、顧客との接点が重複することがあります。顧客別は課題をつかみやすい一方、製品知識の共有が必要です。

万能な組織形態はありません。顧客情報の共有方法、予算と責任、部門間の調整方法を決め、組織論や業績評価とも整合させます。

7. 販売管理:売上から回収までを把握する

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販売管理は、受注から出荷・請求・入金までを把握し、売上と顧客への約束、債権の回収を管理する活動です。

管理対象主な確認項目
受注・出荷受注数、納期、在庫、出荷ミス、返品
売上・値引き商品・顧客・地域別の数量、単価、値引き
債権・回収請求日、入金予定、未回収、回収条件
販売活動顧客対応時間、見積件数、配送件数、販促費
顧客継続率、苦情、納期遵守、顧客別の貢献

例えば売上計上から入金まで時間がかかる場合、売上が増えても仕入代金や給与の支払いに必要な資金が不足することがあります。売上と現金は別に確認し、キャッシュフロー分析や資金調達につなげます。

8. 損益分岐点分析で販売計画を検討する

Section titled “8. 損益分岐点分析で販売計画を検討する”

損益分岐点は、売上高と費用が等しく、利益がゼロになる点です。販売数量や単価の計画が、固定費を回収できる水準かを検討するときに使います。

次の例では、販売単価・単位変動費が一定、固定費が対象範囲で一定、製造数量と販売数量の差や税金などを考慮しないと仮定します。

1件の販売単価8,000円、1件当たり変動費5,000円、月間固定費30万円とします。

  • 1件当たり限界利益:8,000円 − 5,000円 = 3,000円
  • 損益分岐点数量:300,000円 ÷ 3,000円 = 100件
  • 損益分岐点売上高:100件 × 8,000円 = 80万円

月120件なら、限界利益は3,000円 × 120件 = 36万円、固定費30万円を差し引いた利益は6万円です。この利益は例の費用だけを考慮した金額です。

販売単価を7,500円に値引きし、変動費と固定費が変わらない場合、1件当たり限界利益は2,500円です。損益分岐点数量は30万円 ÷ 2,500円 = 120件に増えます。値引き前の利益6万円を目標にするなら、必要数量は(30万円 + 6万円)÷ 2,500円 = 144件です。144件を配送する能力があるか、値引きで実際に注文が増えるかも検討します。

複数の商品を扱う場合は、商品ごとの単価・変動費・販売構成が違います。全体の損益分岐点を一定の限界利益率で計算するときは、販売構成が変わらないなどの前提が必要です。固定費・変動費の分け方、準変動費、数量に応じた能力増強なども結果を変えます。CVP分析と変動費・固定費の分解で詳しく扱います。

9. マーケティングに関連する法規

Section titled “9. マーケティングに関連する法規”

広告、取引条件、顧客情報の取扱いは、顧客との信頼に関わります。適用されるルールは取引形態・表示内容・取扱情報などによって異なります。以下は確認の入口であり、個別の適法性を判断するものではありません。

主な法規・論点確認すること公的資料
景品表示法品質・内容や価格・取引条件を実際より著しく良い・有利と誤認させる表示、景品類の制限など消費者庁:表示に関するQ&A
ステルスマーケティング事業者の広告・宣伝であることが一般消費者に分からない表示消費者庁:ステルスマーケティング
特定商取引法通信販売など、対象となる取引で必要な表示や取引条件消費者庁:通信販売広告
個人情報保護法顧客情報の利用目的、取得・管理・提供など個人情報保護委員会:ガイドライン

例えば「通常価格の半額」と表示する場合、比較する通常価格に根拠があるか、期間や条件を含めて誤解を招かないかを確認します。SNS等の投稿を依頼する場合は、表示が事業者の広告と判断される状況や、広告であることが消費者に分かるかを確認します。法令や公的ガイドラインは更新されるため、実施時点の資料を参照し、必要に応じて専門家に相談します。

  1. 直近3か月の注文が60件、90件、120件のとき、3か月移動平均はいくらですか。また、その数字を使う前に何を確認しますか。
  2. 1件の売上8,000円、変動費5,000円、固定費30万円のとき、損益分岐点は何件ですか。
  3. 単価を7,500円に下げ、他の条件が同じとき、月6万円の利益を得るには何件必要ですか。
  4. 売上が増えても、仕入代金を払う資金が不足するのはなぜですか。
  5. 緊急配送を広告する前に、マーケティングと物流の両方で何を確認しますか。
解答・解説
  1. 90件です。季節性、価格変更、販促、欠品、直近の変化などを確認し、平均が将来も続くとは限らないと考えます。
  2. 限界利益は1件3,000円なので、30万円 ÷ 3,000円 = 100件です。
  3. 限界利益は1件2,500円なので、(30万円 + 6万円)÷ 2,500円 = 144件です。配送能力などは別に確認します。
  4. 売上の計上と入金の時期が異なるためです。債権の回収と仕入・給与などの支払時期を合わせて確認します。
  5. 顧客が求める納期・料金と、対応地域・締切・配送能力・追加費用を確認し、広告の条件を実際のサービスと一致させます。

第3回:戦略的マーケティングへ戻る

5. 市場細分化:顧客の違いを捉える →