コンテンツにスキップ

5. 順序統計量・十分性・標本分布

全データを保存する代わりに、合計や平均だけで母数について同じ推論ができる場合があります。この「母数に関する情報を残す要約」が十分統計量です。単なる情報量の少ない要約との違いを、密度の分解で示します。

独立同分布の標本で尤度が fθ(x)=gθ(T(x))h(x)f_\theta(\boldsymbol x)=g_\theta(T(\boldsymbol x))h(\boldsymbol x) と分解できれば、ネイマンの分解定理により TT は十分です。ベルヌーイ標本では p∑xi(1−p)n−∑xip^{\sum x_i}(1-p)^{n-\sum x_i} なので合計が十分。正規で平均・分散とも未知なら ∑Xi,∑Xi2\sum X_i,\sum X_i^2 が十分です。

十分な統計量で不偏推定量を条件付き平均すると、期待値を保ったまま分散を増やさずに済みます。これがラオ・ブラックウェル化の考え方です。十分であることと、推定量そのものが不偏であることは別の性質です。

小さい順に X(1)≤⋯≤X(n)X_{(1)}\le\cdots\le X_{(n)} と並べます。連続分布の rr 番目の密度は

f(r)(x)=n!(r−1)!(n−r)!F(x)r−1{1−F(x)}n−rf(x).f_{(r)}(x)=\frac{n!}{(r-1)!(n-r)!}F(x)^{r-1}\{1-F(x)\}^{n-r}f(x).

「左側が r−1r-1 個、微小区間が1個、右側が n−rn-r 個」と数えることで導けます。最大値は P(X(n)≤x)=F(x)nP(X_{(n)}\le x)=F(x)^n。外れた観測や端点の推定には平均の標本分布ではなく、こうした分布が必要です。

例題:一様分布の上端を推定する

Section titled “例題:一様分布の上端を推定する”

Xi∼U(0,θ)X_i\sim U(0,\theta) なら最大値 MM の密度は nmn−1/θnnm^{n-1}/\theta^n、0<m<θ0<m<\theta。尤度は θ−n1{M<θ}\theta^{-n}1\{M<\theta\} なので MM が十分です。

E(M)=nθn+1,Var⁡(M)=nθ2(n+1)2(n+2).E(M)=\frac{n\theta}{n+1},\quad \operatorname{Var}(M)=\frac{n\theta^2}{(n+1)^2(n+2)}.

最大値は上端を過小推定します。不偏化は (n+1)M/n(n+1)M/n。n=4,M=8n=4,M=8 なら10です。母数で支持域が変わるため、通常の正則条件の下でのクラーメル・ラオ下限をそのまま適用してはいけません。

正規標本では Xˉ\bar X と不偏分散 S2S^2 が独立で、(n−1)S2/σ2∼χn−12(n-1)S^2/\sigma^2\sim\chi^2_{n-1}。そのため n(Xˉ−μ)/S∼tn−1\sqrt n(\bar X-\mu)/S\sim t_{n-1} が得られます。独立なカイ二乗を自由度で割った比がF分布です。正規性がない場合、これらの有限標本での厳密性は一般に失われます。

U(0,1)U(0,1) から3個取った最大値が0.8以下の確率は?

解答・解説

3個すべてが0.8以下なので 0.83=0.5120.8^3=0.512。最大値は Beta(3,1)\mathrm{Beta}(3,1) に従います。