5. データの要約
何のためにデータを要約するのか
Section titled “何のためにデータを要約するのか”ある店で「商品が届くまで、だいたい何日かかりますか」と聞かれたとします。過去の配達日数を全部読み上げるより、中心となる日数を伝えると分かりやすくなります。しかし、「平均3日」だけでは、全件がほぼ3日なのか、1日と5日に分かれるのかは分かりません。
データの要約は、中心と散らばりを少数の数値で表し、集団を説明したり比較したりするために使います。代表値で「だいたいどの辺か」、範囲や四分位範囲で「どれくらいばらつくか」を調べます。目的に合った数値を選ぶことが、計算と同じくらい大切です。
三つの代表値
Section titled “三つの代表値”データの中心を一つの数値で表すとき、目的や分布に応じて代表値を選びます。
| 代表値 | 求め方 | 特徴 |
|---|---|---|
| 平均値 | 値の合計 ÷ データ数 | すべての値を使い、極端な値に影響されやすい |
| 中央値(メディアン) | 小さい順に並べた中央の値 | 極端な値の影響を受けにくい |
| 最頻値(モード) | 最も多く現れる値 | 複数あることもある。質的データにも使える |
データが 2, 3, 3, 4, 18 なら、平均値は30 ÷ 5 = 6、中央値は3、最頻値は3です。平均だけでは、多くの値が2〜4に集まっていることを十分に伝えられません。
値を動かして平均と中央値を比べる
Section titled “値を動かして平均と中央値を比べる”最後の値を4から30まで動かせます。データは です。この範囲では中央値は3のままですが、平均は に従って変わります。
初期データは2・3・3・4・18。スライダーで最後の値を変更すると、平均値の青い線が動きます。
チャートを読み込んでいます。数値は本文・表でも確認できます。
中央値の位置
Section titled “中央値の位置”まず小さい順に並べます。n個のデータで、nが奇数なら(n + 1) ÷ 2番目、偶数ならn ÷ 2番目とその次の値の平均です。
9, 1, 6, 4 を並べると 1, 4, 6, 9 なので、中央値は(4 + 6) ÷ 2 = 5です。中央値が元データに含まれるとは限りません。
平均を扱う注意
Section titled “平均を扱う注意”10人の平均が60点、30人の平均が80点なら、全体の平均は(60 × 10 + 80 × 30) ÷ 40 = 75点です。人数が違う集団の平均を単純に足して2で割ることはできません。
すべての値に5を足せば平均も5増え、すべての値を2倍すれば平均も2倍になります。ただし、平均の大小だけでは散らばりは分かりません。
最小値・最大値・範囲
Section titled “最小値・最大値・範囲”範囲(レンジ)= 最大値 − 最小値です。2, 3, 3, 4, 18 なら18 − 2 = 16です。単位は元のデータと同じです。範囲は分かりやすい一方、両端の二つの値だけで決まり、外れ値の影響を受けます。
例えば 4, 5, 6 と 0, 5, 10 は平均がどちらも5ですが、範囲は2と10です。中心と散らばりの両方を比較しましょう。
四分位数と四分位範囲
Section titled “四分位数と四分位範囲”データを小さい順に並べ、中央で二つに分けます。
- 第2四分位数Q2は全体の中央値。
- 第1四分位数Q1は下半分の中央値。
- 第3四分位数Q3は上半分の中央値。
- 四分位範囲 = Q3 − Q1。
ここでは、個数が奇数の場合は全体の中央値を上下の半分に含めない方法を使います。ソフトウェアには異なる計算法もあるため、問題で指定された定義を優先します。
1, 2, 3, 4, 6, 8, 9, 11 では、Q2 = (4 + 6) ÷ 2 = 5。下半分 1, 2, 3, 4 の中央値Q1は2.5、上半分 6, 8, 9, 11 の中央値Q3は8.5。四分位範囲は6です。
奇数個の 1, 2, 3, 4, 5, 6, 9 では、Q2 = 4を除き、下半分 1, 2, 3 からQ1 = 2、上半分 5, 6, 9 からQ3 = 6を求めます。
箱ひげ図を読む
Section titled “箱ひげ図を読む”最小値、Q1、中央値、Q3、最大値の五つで分布を表します。箱の左端から右端がQ1〜Q3、箱の中の線が中央値です。ひげを最小値・最大値まで伸ばす基本形なら、先ほどの8個の例は次のようになります。
データは1・2・3・4・6・8・9・11。ひげは最小値1と最大値11まで伸ばしています。
チャートを読み込んでいます。数値は本文・表でも確認できます。
箱が長いほど中央付近の約半数の値の散らばりが大きくなります。ひげや箱の各区間に入るデータの個数はおおむね4分の1ずつなので、区間が長いほどデータが密集している、という意味ではありません。同じ値の重複などにより、各区間の割合が厳密に25%にならないこともあります。
箱ひげ図だけではデータ数、個々の値、平均、山の数は通常分かりません。集団を比較するときは軸の尺度をそろえます。
実践例1:配達日数は、平均と中央値のどちらで伝えるか
Section titled “実践例1:配達日数は、平均と中央値のどちらで伝えるか”ある商品の直近7件の配達日数が 2, 2, 3, 3, 3, 4, 18 日でした。最後の1件は、悪天候で長くかかったものとします。
まず三つの代表値を計算する
Section titled “まず三つの代表値を計算する”平均は(2 + 2 + 3 + 3 + 3 + 4 + 18) ÷ 7 = 35 ÷ 7 = 5日。中央値は4番目の3日、最頻値も3日です。
目的に合わせて意味を考える
Section titled “目的に合わせて意味を考える”「これまでの配達日数を、長い遅延も含めて全体として評価したい」なら、すべての値を反映する平均が役立ちます。一方、「今回の記録で、真ん中に位置する日数は何日か」なら中央値3日です。「最もよく現れた日数」なら最頻値3日を使います。
中央値だけを伝えると、18日かかった実績を隠してしまうかもしれません。「直近7件の中央値は3日、平均は5日で、18日の遅延が1件あった」と説明すれば、通常の中心と長い遅延の両方を伝えられます。どちらか一方が常に正しいのではなく、知りたいことに応じて使い分けます。
18日を「平均から離れているから」という理由だけで削除してはいけません。記録ミスなら訂正しますが、実際に起きた遅延なら重要な情報です。通常時だけを別に分析する場合も、除外の理由と条件を示します。
実践例2:全体の平均を求めるときは合計に戻る
Section titled “実践例2:全体の平均を求めるときは合計に戻る”昼の利用者10人の平均待ち時間が4分、夕方30人の平均が8分だったとします。全体の平均を(4 + 8) ÷ 2 = 6分とすると、昼の10人と夕方の30人を同じ人数として扱ってしまいます。
まず「人数 × 平均」で合計を復元します。昼は40分、夕方は240分、全体は280分です。これを40人で割るので、平均は7分になります。
夕方の人数が多いため、全体の平均は夕方の8分に近くなります。このように人数を重みとする平均は加重平均と呼ばれます。名称だけで覚えるより、合計を人数で割るという平均の定義に戻ると理解できます。
実践例3:平均が同じ二つの窓口を比べる
Section titled “実践例3:平均が同じ二つの窓口を比べる”待ち時間が次のようになった窓口A・Bを比べます。単位は分です。
| 窓口 | 小さい順の待ち時間 | 平均 | 中央値 | 範囲 |
|---|---|---|---|---|
| A | 4, 4, 5, 5, 5, 5, 6, 6 | 5 | 5 | 2 |
| B | 1, 2, 3, 4, 6, 7, 8, 9 | 5 | 5 | 8 |
どちらも合計40分、8人なので平均は5分です。中央値も5分ですが、Aは4〜6分に収まり、Bは1〜9分に広がっています。
「平均的な待ち時間を比べる」だけなら差はありません。しかし「予定を立てやすいか」「長く待つ可能性があるか」を考えるなら、散らばりが重要です。Aの方が、この記録では待ち時間がそろっています。ただし、各8人の記録だけで、今後いつでも同じ傾向になると保証することはできません。
四分位範囲でも比較する
Section titled “四分位範囲でも比較する”Aの下半分は4・4・5・5なのでQ1 = 4.5、上半分は5・5・6・6なのでQ3 = 5.5。四分位範囲は1分です。BはQ1 = 2.5、Q3 = 7.5で、四分位範囲は5分です。
範囲は端から端まで、四分位範囲は中央付近の約半数の広がりを表します。両端だけに注目するか、中央部分にも注目するかで、散らばりを見る角度が変わります。
実践例4:四分位数を一つずつ求める
Section titled “実践例4:四分位数を一つずつ求める”小テスト得点が 9, 4, 6, 10, 5, 7, 3, 8, 20 点でした。本章の「奇数個なら全体の中央値を上下に含めない」方法で求めます。
- 小さい順に
3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 20と並べる。 - 9個の中央、5番目の7がQ2。
- 7を除いた下半分
3, 4, 5, 6からQ1 = (4 + 5) ÷ 2 = 4.5。 - 上半分
8, 9, 10, 20からQ3 = (9 + 10) ÷ 2 = 9.5。 - 四分位範囲は9.5 − 4.5 = 5点。範囲は20 − 3 = 17点。
もし20点が記録訂正で30点になれば、範囲は27点に広がりますが、Q1・Q3は変わらないので四分位範囲は5点のままです。この例から、四分位範囲が端の値の変化に影響されにくいことが分かります。どんな変更でも変わらないという意味ではなく、順位や四分位数に関わる値が変われば結果も変わります。
箱ひげ図を比較するときの読み取り順
Section titled “箱ひげ図を比較するときの読み取り順”まず、同じ単位・同じ軸の尺度で描かれているかを確認します。次に中央値の線を比べて中心の位置を見ます。その後に箱の長さで中央部分の散らばり、ひげの先で両端の広がりを見ます。ひげの定義が異なる図を、そのまま比較しないようにします。
「Bの箱が長いので平均が大きい」は誤りです。箱の長さは四分位範囲で、平均の位置は通常描かれていません。箱ひげ図で判断できないことは、元データや別の指標で確かめます。
1, 2, 2, 5, 10の平均値・中央値・最頻値・範囲を求めてください。2, 4, 6, 8, 10, 12, 14のQ1、Q2、Q3、四分位範囲を求めてください。- 箱ひげ図で箱が長い集団は、必ず人数も多いですか。
解答・解説
- 平均は20 ÷ 5 = 4、中央値2、最頻値2、範囲10 − 1 = 9です。
- 中央値8を除いた下半分は2・4・6、上半分は10・12・14。Q1 = 4、Q2 = 8、Q3 = 12、四分位範囲は8です。
- 言えません。箱の長さが表すのは四分位範囲です。