18. 回帰係数の推測と重回帰
何のために回帰係数にも不確実さを付けるのか
Section titled “何のために回帰係数にも不確実さを付けるのか”手元の標本から傾き0.6の直線が得られても、別の標本なら違う直線になります。係数の信頼区間や検定は、その推定の不確実さを評価する方法です。さらに重回帰では、複数の説明変数を同時に入れて、他を一定にした関連を読みます。
古典的な線形回帰の推測では、条件付き平均の線形性、誤差の独立性、分散一定、誤差の平均0を前提とし、小標本でt・Fを正確に使うには誤差の正規性も仮定します。xそのものが正規分布でなければならない、という条件ではありません。
単回帰の傾きの標準誤差とt検定
Section titled “単回帰の傾きの標準誤差とt検定”、残差分散 とすると、
です。切片の標準誤差は 。係数の95%区間は、推定値±t0.975×SEです。
例題1:傾き0と違うか
Section titled “例題1:傾き0と違うか”単回帰の例ではn = 5、傾き0.6、Sxx = 10、SSE = 2.4、残差分散0.8です。傾きのSEは√(0.8/10) ≈ 0.2828、t = 0.6/0.2828 ≈ 2.121、自由度3です。
両側p ≈ 0.1240で5%では棄却しません。決定係数が0.6でも、わずか5組では傾きの不確実さが大きいことが分かります。95%区間は約**−0.300〜1.500**です。単回帰ではF = t² = 4.5で、全体のF検定と同じ判断になります。
平均応答の信頼区間と、新しい一件の予測区間
Section titled “平均応答の信頼区間と、新しい一件の予測区間”x0での平均応答のSEは、
です。新しい一件の予測では根号内に1を加えます。どちらも予測値を中心にt点を掛けて区間にします。新しい個体の誤差も加わるため、予測区間の方が広くなります。
平均xに近いほど直線の位置は精密に推定され、遠いほど不確実さが大きくなります。観測範囲外への外挿では、モデルそのものが続くかも分かりません。
重回帰モデルと偏回帰係数
Section titled “重回帰モデルと偏回帰係数”βjは、他の説明変数を一定としたとき、Xjが1変わることに対応する平均Yの変化です。XjとYだけの単回帰の傾きとは一般に異なります。条件をそろえた関連を表すのであって、観察データから因果効果が自動的に分かるわけではありません。
切片を含み、説明変数の列が完全には重ならない場合、残差自由度はn−k−1です。各係数のt統計量は「推定値−帰無値」をその係数のSEで割ります。全傾き0という仮説は回帰全体のF検定で評価します。
例題2:ダミー変数で店舗を表す
Section titled “例題2:ダミー変数で店舗を表す”予測式が 、D = 0がA店、D = 1がB店とします。x = 3ならA店の予測16、B店21。係数5は、同じxでB店の予測が5高いことを示します。
分類が3つなら、切片があるモデルでは通常2つのダミーを使い、残りを基準にします。全分類のダミーと切片を同時に入れると完全な線形従属が生じ、係数を一意に決められません。
多重共線性と調整済み決定係数
Section titled “多重共線性と調整済み決定係数”説明変数が互いに強く関連すると、予測全体が大きく変わらなくても各係数が不安定になり、SEが大きくなることがあります。X2 = 2X1のような完全な関係では、通常の係数推定が一意にできません。相関行列や変数の作り方を確認します。
説明変数を増やすと、標本内の通常のR²は下がりません。そこで複雑さを自由度で調整した、
を使うことがあります。n = 30、k = 2、R² = 0.64なら調整済みR² ≈ 0.6133です。変数を増やすとこちらは下がる場合があります。調整済みでも、別データでの予測精度や因果関係の保証ではありません。
出力を読む順序
Section titled “出力を読む順序”目的変数と説明変数、単位・ダミーの基準、使用人数を確認し、係数の符号と大きさ、SE・区間・p値、R²と残差を見ます。p値が大きいだけで変数が無意味と断定せず、多重共線性や標本の大きさも考えます。
- 推定係数2、SE0.5、帰無値0ならtはいくつですか。
- 切片と説明変数3個、n = 40の残差自由度はいくつですか。
- ダミーDの係数が−4なら、D = 0と比べD = 1の予測は、他条件一定でどう違いますか。
解答・解説
- 4です。
- 40−3−1 = 36です。
- 4低いと読みます。基準分類と単位を明示します。