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11. t・χ²・F分布と分布表

何のために分布を使い分けるのか

Section titled “何のために分布を使い分けるのか”

母平均、母分散、二つの分散の比では、比較する統計量の形が異なります。どんな統計量も正規分布と比較してよいわけではありません。標準化した平均、2乗和、分散比のどれを使うかを確認して分布を選びます。

正規母集団から作られる統計量

Section titled “正規母集団から作られる統計量”

独立な Xi∼N(μ,σ2)X_i\sim N(\mu,\sigma^2)、標本分散 s2=∑(Xi−Xˉ)2/(n−1)s^2=\sum(X_i-\bar X)^2/(n-1) とします。

統計量分布主な用途
(Xˉ−μ)/(σ/n)(\bar X-\mu)/(\sigma/\sqrt n)N(0,1)母分散既知の平均
(Xˉ−μ)/(s/n)(\bar X-\mu)/(s/\sqrt n)自由度n−1のt母分散未知の平均
(n−1)s2/σ2(n-1)s^2/\sigma^2自由度n−1のχ²母分散
(s12/σ12)/(s22/σ22)(s_1^2/\sigma_1^2)/(s_2^2/\sigma_2^2)自由度n1−1、n2−1のF独立な二群の母分散比

正規母集団では標本平均と標本分散が独立で、この性質がtなどの分布の導出につながります。正規性が崩れると、特に分散の推測は影響を受けることがあります。

t分布:推定した標準偏差で平均を標準化する

Section titled “t分布:推定した標準偏差で平均を標準化する”

t分布は0を中心に左右対称で、自由度が小さいほど正規分布より裾が厚くなります。標準偏差まで推定した不確実さを反映します。自由度が大きくなると標準正規分布に近づきます。

標準正規分布とt分布(自由度4)

どちらも左右対称。自由度4のt分布は中心が低く裾が厚い形です。平均の推測では、自由度を選んで確率点を読みます。

  • 青実線:標準正規分布
  • 橙破線:t分布、自由度4
グラフの数値を表で確認する
x標準正規の密度自由度4のtの密度
-40.0001340.006708
-20.0539910.066291
00.3989420.375
20.0539910.066291
40.0001340.006708

学習用のデータ・理論値。狭い画面ではグラフを横にスクロールできます。

自由度9で中央95%の境界は約±2.262です。標準正規の±1.96より広いことから、小標本で機械的に1.96を使うと区間が狭くなると分かります。

自由度νが1より大きければ平均0、2より大きければ分散ν/(ν−2)です。自由度が小さい場合に平均や分散が存在しないことがあり、左右対称だから必ず有限の平均があるとは限りません。

カイ二乗分布:標準正規の2乗和

Section titled “カイ二乗分布:標準正規の2乗和”

独立な標準正規変数ν個の2乗和は自由度νのχ²分布です。値は非負、平均ν、分散2ν。自由度が小さいほど右に裾を引きます。

カイ二乗分布(自由度4)

非負で右に裾が長く、左右対称ではありません。自由度4なら平均4、分散8。分散の区間推定では左右の確率点を別々に使います。

  • 青:自由度4のχ²分布
  • 縦の破線:平均4
グラフの数値を表で確認する
x自由度4のχ²の密度
00
20.18394
40.135335
80.036631
120.007436
160.001342

学習用のデータ・理論値。狭い画面ではグラフを横にスクロールできます。

母分散の区間を作るとき、正規分布のように平均±同じ幅とはなりません。上限・下限の確率点を取り違えないようにします。

独立な U∼χν12U\sim\chi^2_{\nu_1}、V∼χν22V\sim\chi^2_{\nu_2} なら、(U/ν1)/(V/ν2)(U/\nu_1)/(V/\nu_2) がF分布です。分子と分母の二つの自由度を持ち、非負で右に裾を引きます。

F分布(分子自由度4・分母自由度8)

分子と分母の自由度の順番が重要です。分散比、回帰の全体検定、分散分析のF比に使います。

  • 分子自由度4、分母自由度8
グラフの数値を表で確認する
xF(4,8)の密度
00
0.40.669796
10.438957
20.15625
40.027435
80.00256

学習用のデータ・理論値。狭い画面ではグラフを横にスクロールできます。

逆数を取ると自由度が入れ替わり、1/F∼Fν2,ν11/F\sim F_{\nu_2,\nu_1} です。また、tの2乗は tν2∼F1,νt_\nu^2\sim F_{1,\nu} で、単回帰の傾きの両側t検定とF検定の関係を理解できます。

F分布の平均はν2 > 2ならν2/(ν2−2)、分散はν2 > 4なら 2ν22(ν1+ν2−2)/{ν1(ν2−2)2(ν2−4)}2\nu_2^2(\nu_1+\nu_2-2)/\{\nu_1(\nu_2-2)^2(\nu_2-4)\} です。例のF4,8では平均4/3、分散20/9です。平均や分散が存在する条件も、自由度と結び付いています。

本コースは qpq_p を P(W≤qp)=pP(W\le q_p)=p となる左側累積p点とします。上側5%点はq0.95、中央95%を挟むのはq0.025とq0.975です。

実際の表に「上側確率0.025」と書かれていれば、それは本コースのq0.975です。記号だけで判断せず、小さな図に欲しい裾を書き、分布名、自由度、上側か下側かを確認して読みます。

χ²の自由度9ならq0.025 ≈ 2.700、q0.975 ≈ 19.023です。正規・tと異なり、下側点を上側点のマイナスとして作ることはできません。

  1. n = 16の正規標本から、母分散未知の平均を推測するときのtの自由度はいくつですか。
  2. F比の分子はn1 = 10、分母はn2 = 15の分散です。二つの自由度を順に答えてください。
  3. 上側2.5%点は、本コースの左側累積記号ではどの点ですか。
解答・解説
  1. 15です。
  2. 9、14です。分子と分母を入れ替えると順序も変わります。
  3. q0.975です。全体1から上側0.025を引いた累積確率です。