2. 標本調査
何のために一部のデータで調べるのか
Section titled “何のために一部のデータで調べるのか”全校600人の通学時間を知りたいとき、全員を調べればよいように思えます。しかし調査に使える時間や費用には限りがあり、製品の耐久試験のように調べると壊れてしまう対象もあります。一部を適切に選び、全体を考える材料にするのが標本調査です。
ただし、誰を選んでもよいわけではありません。自転車置き場に来た人だけでは、徒歩やバスの人が入りにくくなります。標本調査の質は人数とともに選び方にも左右されます。
母集団・標本・標本の大きさ
Section titled “母集団・標本・標本の大きさ”| 用語 | 意味 | 全校通学調査の例 |
|---|---|---|
| 母集団 | 知りたい対象全体 | その学校に在籍する600人 |
| 標本 | 調べるために選んだ対象の集まり | 名簿から選んだ60人 |
| 標本の大きさ | 標本に含まれる対象の数 | 60人。通常 と書く |
| 全数調査 | 対象全体を調べる設計 | 600人全員に調査する |
「市内の全中学生」を知りたいなら、1校600人は母集団全体ではありません。問いによって母集団の範囲が変わります。また、60人を選び48人しか回答しなかった場合、抽出した人数と、分析に使える回答数を区別します。
無作為抽出は、偶然の仕組みで選ぶ
Section titled “無作為抽出は、偶然の仕組みで選ぶ”単純無作為抽出では、決めた大きさのどの標本も同じ確率で選ばれるようにします。例えば全員の名簿から、番号を書いたくじを混ぜて重複なく引きます。「目についた人を適当に選ぶ」は無作為抽出ではありません。
全員が名簿に入っていないと、くじを公平に引いても名簿にない人は選ばれません。抽出の仕組みだけでなく、対象を選ぶもとになる名簿が母集団を適切に覆っているかを確認します。
例題1:乱数表から5人を選ぶ
Section titled “例題1:乱数表から5人を選ぶ”12人に01〜12の番号を付け、5人を重複なく選びます。事前に決めた開始位置から、2桁ずつ読むことにします。説明用の数字の列が次のようだったとします。
07 15 02 07 00 11 04 19 09- 07は範囲内なので採用する。
- 15は01〜12の外なので飛ばす。
- 02は採用する。
- 07はすでに選んだので飛ばす。00も範囲外。
- 11、04を採用し、19を飛ばして09を採用する。
選ばれたのは07・02・11・04・09の5人です。ここでは、各2桁の組が同じ確率で現れる仕組みを想定しています。都合のよい生徒が選ばれる位置を後から探したら、無作為抽出になりません。開始位置と読む方向を先に決めます。
例題2:回答者の割合を全体へ広げる
Section titled “例題2:回答者の割合を全体へ広げる”600人から無作為に選んだ60人全員が回答し、そのうち18人がバス通学でした。標本での比率は、
この30%を全校にも当てはめると、バス通学者数の推定は600 × 0.30 = 180人です。ただし、調べなかった540人の実際の通学手段は不明なので、180人は確定値ではありません。別の60人を選べば、比率も変わり得ます。その偶然の変動を標本分布・区間推定で扱います。
一方、回答者が全員バス乗り場で募集された人なら、同じ18/60でも全校の割合への当てはめは難しくなります。計算式だけで代表性を保証することはできません。
国勢調査と全数調査
Section titled “国勢調査と全数調査”国勢調査は、日本に常住する人と世帯の状況を把握する全数調査の例です。「一部を抽出して全体を推定する設計」との違いを押さえます。全数調査でも未回答、記入や入力の誤りが起こらないわけではありません。
全員に聞く調査と、希望者だけが回答する投票も区別します。後者は参加する人の性質が偏る可能性があり、回答数が多いだけでは全体を代表していると言えません。
人数を増やせば、すべて解決するか
Section titled “人数を増やせば、すべて解決するか”無作為に抽出した標本の大きさを増やすと、一般に偶然による推定のばらつきは小さくなります。ただし、質問の誘導、特定の人が答えにくい方法、誤った記録などの問題は、人数を増やすだけでは解消しません。
調査を読むときは「対象全体 → 選び方 → 選んだ人数 → 回答した人数 → 質問文 → 結果」の順に確認しましょう。調査計画の具体例は4級のデータの収集にもあります。
- 2,000人の住民から100人を選ぶとき、標本の大きさはいくつですか。
- 01〜20から抽出するとき、数字の列
03 21 03 18 00 07で最初に採用される3人は誰ですか。重複なしとします。 - 100人中40人が賛成なら、全体2,000人中の賛成人数の推定はいくつですか。確定値でしょうか。
解答・解説
- 100人です。2,000人は母集団の大きさです。
- 03・18・07。範囲外と重複は飛ばします。
- 2,000 × 0.4 = 800人の推定です。抽出方法が適切であることが前提で、標本誤差もあるため確定値ではありません。