7. 共分散・相関と因果
何のために二つの変数の関係を調べるのか
Section titled “何のために二つの変数の関係を調べるのか”練習時間が長い人ほど得点が高いか、待ち時間が長いほど満足度が低いかなど、一つの変数だけでは分からない問いがあります。散布図で二つの値の組を見て、その直線的な関連の向きと強さを数値化するのが相関分析です。
相関は予測の手がかりになりますが、原因の証明ではありません。数値を計算する前に散布図を描き、曲がった関係や離れた点がないかを確認しましょう。
例題:練習時間と得点の組を調べる
Section titled “例題:練習時間と得点の組を調べる”| 人 | 練習時間x(時間) | 得点y(点) |
|---|---|---|
| A | 1 | 2 |
| B | 2 | 4 |
| C | 3 | 5 |
| D | 4 | 4 |
| E | 5 | 5 |
5人の練習時間と得点。右上がりの傾向はありますが、点が一本の直線上に並んでいるわけではありません。
チャートを読み込んでいます。数値は本文・表でも確認できます。
グラフの数値を表で確認する
| 人 | 練習時間(時間) | 得点(点) |
|---|---|---|
| A | 1 | 2 |
| B | 2 | 4 |
| C | 3 | 5 |
| D | 4 | 4 |
| E | 5 | 5 |
学習用のデータ・理論値。狭い画面ではグラフを横にスクロールできます。
平均は 、 です。両方の平均より大きい点、両方より小さい点が多ければ、同じ方向に動く関係があると考えられます。
共分散:二つの偏差を掛ける
Section titled “共分散:二つの偏差を掛ける”各人について、xの平均からの偏差と、yの平均からの偏差を掛けます。
| 人 | x−3 | y−4 | 偏差の積 |
|---|---|---|---|
| A | −2 | −2 | 4 |
| B | −1 | 0 | 0 |
| C | 0 | 1 | 0 |
| D | 1 | 0 | 0 |
| E | 2 | 1 | 2 |
| 合計 | 0 | 0 | 6 |
偏差の積の平均を取った共分散は、
です。同じ側の偏差同士なら積は正、違う側なら負になります。共分散が正なら正の関連、負なら負の関連の手がかりです。ただし大きさは単位に左右されます。時間を分に変えるとxが60倍、共分散も60倍になり、関係そのものは変わらないのに数値が変わります。
相関係数:単位の影響を取り除く
Section titled “相関係数:単位の影響を取り除く”共分散を両変数の標準偏差で割ります。分母nで計算した分散を使うと、xの分散は2、yの分散は1.2なので、
となります。分散・共分散の分母を同じ約束でそろえれば、n−1で計算しても相関係数は同じです。
| 相関係数 | 基本的な読み方 |
|---|---|
| 1に近い | 右上がりの直線の近くに集まる |
| −1に近い | 右下がりの直線の近くに集まる |
| 0に近い | 直線的な関連が弱い |
値は−1以上1以下で、単位がありません。「0.775だから77.5%の人に効果がある」という意味ではありません。相関の強弱を区切る絶対的な基準もなく、目的や分野、データ数と併せて解釈します。
相関係数の注意点
Section titled “相関係数の注意点”0でも無関係とは限りません。 xが−2・−1・0・1・2、yがその2乗の4・1・0・1・4なら、明確なU字型の関係があるのに相関係数は0です。相関係数が測るのは直線的な関係です。
離れた一つの点が数値を大きく変えることがあります。 入力ミスを調べるとともに、元の分布も示します。都合の悪い点を理由なく削除しません。
集団を混ぜると、集団内とは違う関係が見えることがあります。 学年の違う生徒の身長と学習内容を一緒に扱うなど、集団の構成にも注意します。
どちらかの標準偏差が0、つまり全員同じ値なら、この式の相関係数は定義できません。
相関と因果:なぜ原因とは言い切れないか
Section titled “相関と因果:なぜ原因とは言い切れないか”暑い日ほど冷たい飲み物も帽子もよく売れたとします。飲み物の売上と帽子の売上には正の関連があっても、飲み物を買うことが帽子を買う原因とは限りません。気温という第三の要因が、両方に影響している可能性があります。このように、別の要因による見かけの関連を擬相関と呼びます。
方向が逆の場合もあります。「練習が多いから得点が高い」だけでなく、「得意だから練習を好む」可能性も考えられます。因果関係を調べたいなら、実験など、データを得る仕組みと比較条件が必要です。
結論をどう書くか
Section titled “結論をどう書くか”例題なら「今回の5人では練習時間と得点に正の直線的な関連があり、相関係数は約0.775だった。観察記録のため、練習時間を増やせば得点が上がるとまでは断定できない」と書けます。この関係を直線で表す方法は回帰直線で学びます。
- 共分散−6、xの標準偏差2、yの標準偏差5のとき、相関係数はいくつですか。
- xだけを正の定数10倍にすると、相関係数はどうなりますか。
- 冷たい飲み物と帽子の売上に相関がありました。別の要因として何が考えられますか。
解答・解説
- です。
- 変わりません。共分散とxの標準偏差が同じ倍率になり、打ち消し合います。
- 気温や季節、来店者数など。関連だけで、片方が他方の原因とは判断できません。
品質管理での活用
Section titled “品質管理での活用”QC検定3級の相関では、偏差の積和と平方和からrを計算し、工程条件の関係を調べます。層別の章は、全体の関連や割合が品種構成の違いで変わる例です。