コンテンツにスキップ

7. 共分散・相関と因果

何のために二つの変数の関係を調べるのか

Section titled “何のために二つの変数の関係を調べるのか”

練習時間が長い人ほど得点が高いか、待ち時間が長いほど満足度が低いかなど、一つの変数だけでは分からない問いがあります。散布図で二つの値の組を見て、その直線的な関連の向きと強さを数値化するのが相関分析です。

相関は予測の手がかりになりますが、原因の証明ではありません。数値を計算する前に散布図を描き、曲がった関係や離れた点がないかを確認しましょう。

例題:練習時間と得点の組を調べる

Section titled “例題:練習時間と得点の組を調べる”
人練習時間x(時間)得点y(点)
A12
B24
C35
D44
E55
散布図:直線的な関連を確かめる

5人の練習時間と得点。右上がりの傾向はありますが、点が一本の直線上に並んでいるわけではありません。

グラフの数値を表で確認する
人練習時間(時間)得点(点)
A12
B24
C35
D44
E55

学習用のデータ・理論値。狭い画面ではグラフを横にスクロールできます。

平均は xˉ=3\bar x=3、yˉ=4\bar y=4 です。両方の平均より大きい点、両方より小さい点が多ければ、同じ方向に動く関係があると考えられます。

各人について、xの平均からの偏差と、yの平均からの偏差を掛けます。

人x−3y−4偏差の積
A−2−24
B−100
C010
D100
E212
合計006

偏差の積の平均を取った共分散は、

cxy=1n∑(xi−xˉ)(yi−yˉ)=65=1.2c_{xy}=\frac{1}{n}\sum(x_i-\bar x)(y_i-\bar y)=\frac65=1.2

です。同じ側の偏差同士なら積は正、違う側なら負になります。共分散が正なら正の関連、負なら負の関連の手がかりです。ただし大きさは単位に左右されます。時間を分に変えるとxが60倍、共分散も60倍になり、関係そのものは変わらないのに数値が変わります。

相関係数:単位の影響を取り除く

Section titled “相関係数:単位の影響を取り除く”

共分散を両変数の標準偏差で割ります。分母nで計算した分散を使うと、xの分散は2、yの分散は1.2なので、

r=cxysxsy=1.221.2≈0.775r=\frac{c_{xy}}{s_xs_y} =\frac{1.2}{\sqrt2\sqrt{1.2}} \approx0.775

となります。分散・共分散の分母を同じ約束でそろえれば、n−1で計算しても相関係数は同じです。

相関係数基本的な読み方
1に近い右上がりの直線の近くに集まる
−1に近い右下がりの直線の近くに集まる
0に近い直線的な関連が弱い

値は−1以上1以下で、単位がありません。「0.775だから77.5%の人に効果がある」という意味ではありません。相関の強弱を区切る絶対的な基準もなく、目的や分野、データ数と併せて解釈します。

0でも無関係とは限りません。 xが−2・−1・0・1・2、yがその2乗の4・1・0・1・4なら、明確なU字型の関係があるのに相関係数は0です。相関係数が測るのは直線的な関係です。

離れた一つの点が数値を大きく変えることがあります。 入力ミスを調べるとともに、元の分布も示します。都合の悪い点を理由なく削除しません。

集団を混ぜると、集団内とは違う関係が見えることがあります。 学年の違う生徒の身長と学習内容を一緒に扱うなど、集団の構成にも注意します。

どちらかの標準偏差が0、つまり全員同じ値なら、この式の相関係数は定義できません。

相関と因果:なぜ原因とは言い切れないか

Section titled “相関と因果:なぜ原因とは言い切れないか”

暑い日ほど冷たい飲み物も帽子もよく売れたとします。飲み物の売上と帽子の売上には正の関連があっても、飲み物を買うことが帽子を買う原因とは限りません。気温という第三の要因が、両方に影響している可能性があります。このように、別の要因による見かけの関連を擬相関と呼びます。

方向が逆の場合もあります。「練習が多いから得点が高い」だけでなく、「得意だから練習を好む」可能性も考えられます。因果関係を調べたいなら、実験など、データを得る仕組みと比較条件が必要です。

例題なら「今回の5人では練習時間と得点に正の直線的な関連があり、相関係数は約0.775だった。観察記録のため、練習時間を増やせば得点が上がるとまでは断定できない」と書けます。この関係を直線で表す方法は回帰直線で学びます。

  1. 共分散−6、xの標準偏差2、yの標準偏差5のとき、相関係数はいくつですか。
  2. xだけを正の定数10倍にすると、相関係数はどうなりますか。
  3. 冷たい飲み物と帽子の売上に相関がありました。別の要因として何が考えられますか。
解答・解説
  1. −6/(2×5)=−0.6-6/(2\times5)=\mathbf{-0.6} です。
  2. 変わりません。共分散とxの標準偏差が同じ倍率になり、打ち消し合います。
  3. 気温や季節、来店者数など。関連だけで、片方が他方の原因とは判断できません。

QC検定3級の相関では、偏差の積和と平方和からrを計算し、工程条件の関係を調べます。層別の章は、全体の関連や割合が品種構成の違いで変わる例です。