5. キャッシュフロー分析
何のために必要か
Section titled “何のために必要か”利益が出ていても、売掛金を回収できなければ支払資金が不足します。反対に借入で現金が増えても、事業が稼いだとは限りません。資金がどの活動で増減したかを分析し、将来の支払を計画します。
営業・投資・財務の3区分
Section titled “営業・投資・財務の3区分”公表CF計算書が対象にする資金は現金及び現金同等物です。B/Sの「現金預金」と対象範囲が必ず同一とは限りません。本例では現金預金の全額がCFの対象資金に一致すると仮定しています。
| 区分 | 基本的な意味 | 例 |
|---|---|---|
| 営業CF | 通常の事業活動等の資金収支 | 商品代金の回収、仕入・給与の支払 |
| 投資CF | 将来の収益獲得等に向けた投資 | 設備取得・売却 |
| 財務CF | 資金の調達と返済等 | 借入、元本返済、増資、配当 |
日本の基準における実際の表示には、利息・配当等の選択可能な区分や個別取引の条件があります。本章の表は学習用の基本整理です。ASBJ掲載の作成基準を参照し、借入元本と支払利息を混同しないようにします。
例題:青葉社の利益35万円を現金へ調整する
Section titled “例題:青葉社の利益35万円を現金へ調整する”3〜4章と同じ年度・単位は万円です。本例では税金・利息の未払増減等はなく、純利益へ織り込まれた額を営業区分で支払済みとします。以下は純利益から始める内部管理用の簡略調整表で、日本基準の公表CF計算書様式そのものではありません。
| 調整項目 | 金額 | 理由 |
|---|---|---|
| 当期純利益 | 35 | 出発点 |
| 減価償却費を加算 | +20 | 当期の非資金費用を戻す |
| 売掛金増加 | −20 | 売上のうち資金化されていない増分 |
| 棚卸資産増加 | −10 | 在庫に資金が追加で滞留 |
| 買掛金増加 | +10 | 仕入等のうち支払前の増分 |
| 営業CF | 35 | 35+20−20−10+10 |
減価償却はそれ自体が現金を生むわけではありません。利益から引かれていた非資金費用を、現金収支へ戻す調整です。在庫増加も常に損失とは限らず、成長や季節に備えた投資の場合があります。
投資・調達と期末残高を照合する
Section titled “投資・調達と期末残高を照合する”| 資金の動き | 金額 |
|---|---|
| 期首現金 | 100 |
| 営業CF | +35 |
| 設備取得(投資CF) | −50 |
| 借入純増(財務CF) | +40 |
| 期末現金 | 125 |
単位は万円。期首100に営業CF35、投資CF−50、財務CF40を加え、期末125となります。
- 灰:期首・期末残高
- 青:資金増加
- 橙:資金減少
- 縦軸:万円
チャートを読み込んでいます。数値は本文・表でも確認できます。
グラフの数値を表で確認する
| 項目 | 金額(万円) | 扱い | 残額(万円) |
|---|---|---|---|
| 期首現金 | 100 | 起点 | 100 |
| 営業CF | 35 | 増減 | 135 |
| 投資CF | -50 | 増減 | 85 |
| 財務CF | 40 | 増減 | 125 |
| 期末現金 | 125 | 終点 | 125 |
学習用のデータ・理論値。狭い画面ではグラフを横にスクロールできます。
B/Sでは固定資産260+設備取得50−減価償却20=290、借入180+40=220となり整合します。ここで営業CF−設備投資を単純なFCFと定義すると−15万円です。これは資本支出控除後の資金余剰であり、企業価値評価で使うFCFF等の定義とは区別します。FCFが負でも、将来に向けた投資なら直ちに経営不振とはいえません。
資金繰り表と回転期間
Section titled “資金繰り表と回転期間”月次の期首現金+予定入金−予定支払=期末現金を作り、売掛回収、買掛支払、給与、税、投資、元本返済を支払月へ置きます。年間黒字でも、ある月に資金が尽きる可能性があります。
青葉社の年間売上600が全額掛売りなら、平均売掛金90に対する回収期間は 日です。回収を5日短くできれば、定常状態の単純計算で 万円の資金負担が軽くなります。季節性・回収不能・売上変化があれば別途調整します。
棚卸日数+売掛回収日数−買掛支払日数をキャッシュ・コンバージョン・サイクルと呼びます。分母は在庫には対応する売上原価、買掛には掛仕入等を使い、定義と対象範囲を合わせます。
他の条件は同じで、売掛金増加が20でなく40だった場合、営業CFと期末現金はいくらですか。
解答・解説
営業CF15、期末現金105です。利益は同じでも、回収待ちが20多い分だけ現金が20減ります。