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8. 消費者行動

消費者行動は何のために学ぶのか

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同じ商品を見ても、すぐに買う人、比較してから買う人、購入を見送る人がいます。価格や品質だけでなく、その人が直面する課題、経験、家族、情報、購入時の状況などが関係するからです。

消費者行動は、人が必要性を感じ、情報を集め、商品やサービスを選び、購入・利用し、その後に評価するまでの行動を考える分野です。これを学ぶと、売り手が伝えたいことだけでなく、顧客が何に困り、何を判断材料にしているかを考えられます。

市場細分化や標的市場設定で分けた顧客の違いも、実際の行動や経験を調べて確かめる必要があります。以下では、家庭向けの食材宅配と、飲食店向けの仕入れを例に考えます。

消費者の購入過程は、次の五つに整理できます。これは理解するためのモデルであり、すべての購入で順番どおりに進むわけではありません。いつもの商品を買うときは比較を省いたり、購入後の経験をもとに再び情報を探したりします。

段階消費者が行うこと食材宅配の例
問題認識現状と望ましい状態の差に気付く買い物に行く時間が足りない
情報探索解決方法や商品を調べる近くの店舗、宅配、料金を調べる
代替案の評価複数の選択肢を比べる品ぞろえ、価格、配送時間、手間を比べる
購買決定購入・契約・利用を決める利用するサービスと初回の商品を選ぶ
購買後の行動利用経験を評価し、継続や変更を考える商品の品質や受取のしやすさを確認する

購入の前後には、誰かへの相談、在庫切れ、家計の変化なども影響します。事業者は購入時だけでなく、利用方法の説明、問い合わせ対応、改善まで含めて顧客経験を考えます。

例題:比較の結果が変わる理由

Section titled “例題:比較の結果が変わる理由”

ある人が食材宅配AとBを検討しています。Aは価格が安く、Bは希望時間に受け取りやすいとします。帰宅時間が不規則で再配達を避けたい人はBを選ぶかもしれません。一方、決まった時間に受け取れ、支出を抑えたい人はAを選ぶかもしれません。

考え方: どちらがすべての人にとって優れているとは決まりません。比較する属性とその重要度は、顧客の状況や用途によって変わります。実際の選択は、調査と利用データで確かめます。

購買行動は、一つの原因だけで説明できません。主な要因は次のように整理できます。

要因内容食材宅配の例
文化的要因文化、生活習慣、価値観など食習慣や地域の行事が必要な食材に影響する
社会的要因家族、友人、所属集団、周囲の人など家族の好みや友人の経験を参考にする
個人的要因年齢、職業、所得、生活状況など勤務時間や世帯人数によって必要な量が変わる
心理的要因動機、知覚、学習、信念、態度など以前の利用経験から、配達の信頼性を重視する
状況要因時間、場所、在庫、急な出来事など急いでいるため、比較せずに手に入る商品を選ぶ

これらの分類は互いに独立ではありません。例えば家族の事情と仕事の時間が、同時に選択へ影響することがあります。また、年齢や所得だけから個人の考えを決めつけることはできません。

  • 動機:何かを得たい、困りごとを解決したいという行動のきっかけ。例:買い物時間を減らしたい。
  • 知覚:情報に気付き、受け取り、意味づける過程。同じ広告でも、価格に目が向く人と受取方法に目が向く人がいる。
  • 学習:経験などを通じて、判断や行動が変化すること。以前の配送遅延を経験して、納期を重視することがある。
  • 信念・態度:商品や企業に対する考えや評価。評価は経験や新しい情報によって変化し得る。

広告を見たから必ず購入するわけではありません。何が影響したかは、顧客の声と実際の行動を組み合わせて確認します。

購入の仕方は、商品への関与の大きさや、ブランド間の違いをどれほど感じるかによって整理できます。関与とは、その購入にどれだけ関心を持ち、重要だと感じているかという程度です。以下は典型的な分類であり、商品や人を固定的に決めつけるものではありません。

スタイルよく見られる条件例
複雑な購買行動関与が高く、選択肢の違いが大きいと感じる高額な設備を複数社で比較する
不協和低減型の購買行動関与は高いが、選択肢の違いが分かりにくい似た条件の高額サービスを選び、購入後に判断を気にする
習慣的購買行動関与が低く、選択肢の違いも大きく感じないいつもの日用品をあまり比較せず買う
バラエティ追求型の購買行動関与は低いが、選択肢の違いを感じる特に不満がなくても、別の味のお菓子を試す

習慣的に買う商品でも、価格が大きく変わったり、初めての購入だったりすると、比較に時間をかけることがあります。バラエティ追求は必ずしも現在の商品への不満を意味しません。

購買行動を理解するモデルは、複雑な現実の一部を整理する道具です。モデルの記号に人を当てはめるだけでなく、どの場面で役立ち、何を説明しきれないかを確認します。

考え方見るもの活用例と注意点
刺激と反応商品、価格、広告などの刺激と、選択などの反応施策後の反応を見る。反応までの心理や周囲の影響を別途調べる
購買意思決定プロセス問題認識から購買後までの過程各段階で必要な情報や障害を整理する。必ず順番どおりとは限らない
AIDMA注意・関心・欲求・記憶・行動という考え方認知から行動までの情報提供を考える。一方向の流れに限定しない
AISAS注意・関心・検索・行動・共有という考え方検索や購入後の共有を考える。人が常に全段階を通るわけではない
購買データ分析購入頻度、金額、組み合わせ、継続など利用の違いを探る。購入しなかった理由は記録だけでは分からない

たとえば購買履歴から「月末に注文が増える」と分かっても、それだけでは理由は不明です。給与日、店舗の販促、営業日など複数の可能性を考え、マーケティング・リサーチで確かめます。相関が見えても因果関係とは限りません。

5. 認知的不協和と購買後の行動

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認知的不協和は、自分の考えや行動の間に矛盾や不整合を感じたときの心理的な居心地の悪さを指します。購買場面では、購入後に「高い方を選んだが、安い方でよかったのでは」と迷うことがあります。特に重要な選択や、選択肢にそれぞれ利点がある場合に生じ得ます。ただし、すべての高額購入で必ず起きるわけではありません。

例:宅配サービスを契約した後

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利用者が料金の高いBを契約した後、「価格の安いAの方がよかったかもしれない」と不安になりました。事業者は、契約前に料金・配送条件・解約方法を分かりやすく説明し、契約後も利用方法や問い合わせ先を案内できます。

大切なのは、不安を利用して顧客を引き留めることではなく、事実に基づく情報を提供し、実際に約束した価値を届けることです。継続率だけで判断せず、問い合わせや解約の理由、利用者の経験も確認します。

6. 新製品の普及過程と消費者分類

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新しい商品やサービスは、すべての人が同時に使い始めるわけではありません。個人が新製品を採用するまでを、一般に認知 → 関心 → 評価 → 試用 → 採用として整理します。各段階は前後したり、省略されたりすることがあります。

段階消費者の動き宅配サービスの例
認知存在を知る近所で宅配が始まったと知る
関心もっと知りたいと思う品ぞろえや配達地域を調べる
評価自分に合うか考える利用条件と他社を比較する
試用少し試してみる少量を一度注文する
採用継続して利用する自分の生活に合えば定期的に利用する

普及を説明する代表的なモデルでは、採用の早さによって次の五つに分けます。

分類一般的な特徴
イノベーター新しいものを比較的早く試す人
アーリーアダプター早い段階で採用し、周囲の参考になることもある人
アーリーマジョリティ比較的慎重に検討し、平均より早い段階で採用する人
レイトマジョリティ普及状況や周囲の経験を見て、比較的遅い段階で採用する人
ラガード従来の方法を重視するなど、さらに遅く採用する傾向のある人

教科書では順に約2.5%、13.5%、34%、34%、16%という比率が紹介されることがあります。これは一定の仮定に基づくモデル上の目安であり、あらゆる商品・地域にその割合が当てはまるわけではありません。一人の消費者がすべての製品で同じ分類になるとも限りません。新製品の採用過程の解説も参照してください。

既存の方法に比べた利点が分かりやすいか、生活や業務に合うか、使い方が複雑でないか、試しやすいか、効果を確認しやすいかなどが関係します。例えば宅配サービスでも、注文アプリの使いやすさ、料金の明確さ、少量で試せるかによって採用のしやすさは変わります。これらは普及を考える手掛かりであり、普及を保証する条件ではありません。

企業、自治体、学校、非営利組織などの組織購買では、購入したものを事業・業務・サービスに使ったり、再販売したりします。家庭の購入と同様に人が判断しますが、組織の目的、予算、手続き、複数の関係者が意思決定に影響することが多い点に注目します。

役割主な関わり飲食店の食材仕入れの例
使用者購入したものを使う調理担当者
影響者条件や評価に影響する衛生・品質を確認する担当者
購買者発注や取引条件の交渉を担う仕入担当者
決定者最終的な選択を行う店長や経営者
情報の管理者情報の流れや接触を調整する仕入先からの連絡を取りまとめる担当者

一人が複数の役割を担う場合も、役割が明確に分かれていない場合もあります。営業担当者が店長に価格だけを説明しても、調理担当者が必要とする品質や納期を満たしていなければ、継続取引につながりにくくなります。

  • 新規購買:初めての商品や仕入先を検討し、情報収集や関係者間の調整が多くなる場合。
  • 修正再購買:既存の取引について、価格、仕様、数量、仕入先などを見直す場合。
  • 定型再購買:これまでと同様の条件で、繰り返し注文する場合。

例えば欠品が頻発した飲食店が、新しい仕入先を探すなら、新規に複数社を比較するかもしれません。既存の仕入先に配送時間の変更を求めるなら、条件の修正を検討する状況です。必要な情報や意思決定にかかる時間は取引ごとに異なります。

顧客の意思決定を理解することは、誤解を利用して契約を迫ることではありません。正確で分かりやすい情報を示し、顧客が自分の意思で選べるようにします。適用関係は契約内容や取引方法によって異なります。

法規・論点確認すること公的資料
消費者契約法消費者契約における不当な勧誘や契約条項消費者庁:消費者契約法
景品表示法商品の品質や価格・取引条件に関する誤認を招く表示など消費者庁:表示規制の概要
特定商取引法対象となる取引での表示や勧誘など消費者庁:特定商取引法とは
個人情報保護法購買履歴や顧客情報の取得・利用・提供・管理個人情報保護委員会:ガイドライン

例えば、宅配サービスを案内する際は、料金、配送範囲、継続条件、解約方法などを、実際の内容に合わせて分かりやすく示します。購買履歴を分析する場合も、取得・利用目的や管理、外部への提供などを確認します。法令や公的資料は更新されるため、実施時点の案内を参照し、必要に応じて専門家に相談してください。

9. 消費者行動を管理会計につなげる

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顧客が「注文の手間を減らしたい」「急な欠品を避けたい」と考えるなら、その価値を提供するための活動を整理します。例えば、電話受付、受注入力、小口仕分け、緊急配送、問い合わせ対応です。

顧客の行動・課題関係する活動管理会計で確認する例
注文のたびに電話する受付・入力注文件数、入力時間、修正件数
少量を頻繁に注文する仕分け・配送配送件数、走行距離、作業時間
契約後に条件を確認したい問い合わせ・説明問い合わせ内容、対応時間、再問い合わせ

活動基準原価計算では、価値を届ける活動とその原価を捉えます。ただし、顧客対応を減らせばよいとは限りません。説明不足が不安や解約を招くなら、短期的な費用だけでなく顧客の経験も考えます。自動化や配送条件の変更を検討するときは、実際に増減する費用と収益を差額原価収益分析で比較します。

  1. 購入後に「別のサービスの方がよかったかもしれない」と感じる心理を何と呼びますか。
  2. 新製品を知って関心を持った人が、少量を試し、その後継続して利用する過程をどう整理できますか。
  3. 日用品をいつも通り購入する行動と、不満はないが別の味を試す行動は、どの購買意思決定スタイルに近いですか。
  4. 飲食店の仕入れで、調理担当者と店長が異なる役割を持つことを、販売側はなぜ考える必要がありますか。
  5. 購買履歴に月末の注文増が見られるだけで、その原因を給与日だと断定できますか。
解答・解説
  1. 認知的不協和です。購入後の判断に不安を感じる例ですが、必ず生じるわけではありません。
  2. 一般に認知・関心・評価・試用・採用として整理できます。順序や段階は個人・商品によって異なります。
  3. 前者は習慣的購買行動、後者はバラエティ追求型の購買行動に近い例です。
  4. 実際に使う人が必要とする品質や納期と、決定する人が重視する価格や予算が異なることがあるためです。一人が両方の役割を担う場合もあります。
  5. 断定できません。販促、営業日など他の要因もあり、追加の調査や適切な比較が必要です。

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