8. 確率の基礎
何のために確率を考えるのか
Section titled “何のために確率を考えるのか”くじで当たりが出るか、さいころで6が出るかなど、一回の結果を事前に言い切れない場面があります。それでも、当たりやすさを比べたり、何度も繰り返したときの傾向を考えたりすることはできます。その不確実さを数値で表す道具が確率です。
例えば、当たり券が2枚入った10枚のくじと、3枚入った20枚のくじでは、当たりの枚数が多い後者の方が当たりやすいのでしょうか。全券が同じ確率で選ばれるなら、前者は2/10 = 20%、後者は3/20 = 15%なので、前者の方が当たりやすくなります。条件に合う数だけでなく、起こり得る全体をそろえて考える点は割合の学習と共通しています。
この章では、一回の結果を断言するのではなく、起こりやすさを筋道立てて求める方法を身につけます。
起こるかどうかが不確かな出来事の起こりやすさを、0から1の数で表したものが確率です。起こり得ない出来事は0、必ず起こる出来事は1です。0.25は25%と同じです。
起こり得る一つ一つの結果が同様に確からしいとき、次の式を使えます。
確率 = 条件に合う結果の数 ÷ 起こり得る結果の総数
全結果の集合を 、条件に合う結果を と書くと、
公平なさいころ1個で偶数が出る結果は2・4・6の3通り、全体は6通りなので、確率は3 ÷ 6 = 1/2です。結果が同様に確からしくない場合、単に種類の数を割る方法は使えません。
試行と相対度数
Section titled “試行と相対度数”さいころを投げるなど、結果を観測する操作を試行といいます。繰り返したときの相対度数は、確率を考える手がかりになります。ただし、公平な硬貨を10回投げて表が必ず5回出るわけではありません。これまで裏が続いても、次の独立な試行で表が出る確率は1/2のままです。
樹形図で漏れなく数える
Section titled “樹形図で漏れなく数える”硬貨を2回投げる場合、順序を区別して列挙します。
1回目 2回目 結果 ┌ 表 → (表, 表) 表 ──┤ └ 裏 → (表, 裏) ┌ 表 → (裏, 表) 裏 ──┤ └ 裏 → (裏, 裏)公平な硬貨を独立に投げるなら、各結果は同じ確率で4通りです。「表が1回だけ」は2通りなので1/2。「表が0回・1回・2回」の三つを、それぞれ1/3とするのは誤りです。表1回に対応する結果だけが2通りあります。
「または」と「かつ」
Section titled “「または」と「かつ」”同時には起こらない出来事の「または」は確率を足します。さいころで1または2が出る確率は1/6 + 1/6 = 1/3です。
重なる出来事では二重に数えた部分を引きます。「偶数または3の倍数」は、{2, 4, 6} と {3, 6} の重なり6を一度だけ数え、{2, 3, 4, 6} の4通り、つまり2/3です。
独立な出来事の「かつ」は確率を掛けられます。独立な硬貨2回が両方表となる確率は1/2 × 1/2 = 1/4です。独立でない場合は、次の結果の確率が変わらないか確認します。
余事象を使う
Section titled “余事象を使う”「Aが起こらない」はAの余事象です。
Aが起こらない確率 = 1 − Aが起こる確率
硬貨2回で「少なくとも1回は表」は、「2回とも裏」以外です。したがって1 − 1/4 = 3/4です。「少なくとも」「1回もない」といった条件で役立ちます。
さいころ2個の例
Section titled “さいころ2個の例”赤と青の公平なさいころを独立に投げます。(赤, 青)を区別すると全体は6 × 6 = 36通り。和が7になるのは(1,6)、(2,5)、(3,4)、(4,3)、(5,2)、(6,1)の6通りなので1/6です。
和の値2〜12の11種類は、同様に確からしくありません。和が2になるのは(1,1)の1通り、和が7になるのは6通りです。
取り出したものを戻すか
Section titled “取り出したものを戻すか”赤玉3個、白玉2個の袋から、よく混ぜて1個ずつ2回取り出します。各玉は等しい確率で選ばれるとします。
- 戻す場合:毎回赤の確率は3/5。両方赤は3/5 × 3/5 = 9/25。
- 戻さない場合:最初が赤なら、残り4個のうち赤は2個。両方赤は3/5 × 2/4 = 3/10。
戻さない場合は、樹形図の各段階で残る個数を更新します。各玉に番号を付ければ、区別した結果を数える方法でも確認できます。
実践例1:二つのさいころの結果を表にする
Section titled “実践例1:二つのさいころの結果を表にする”公平な赤・青のさいころを独立に投げ、「和が4以下」の確率を求めます。赤が1〜6の6通り、それぞれに青が1〜6の6通りあるので、全体は36通りです。
次の表の各セルは、赤の目と青の目の和を表します。
| 赤\青 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
| 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
| 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
| 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
| 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
| 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
和が2は1セル、3は2セル、4は3セルで、条件に合うのは合計6セルです。したがって確率は6/36 = 1/6です。
ここで数えるのは和の「種類」ではなく、同様に確からしい赤・青の組み合わせです。和の2・3・4の3種類を、和の2〜12の11種類で割った3/11にはなりません。表にすると、同じ和が現れる回数の違いを見て確かめられます。
実践例2:樹形図の枝に確率を書く
Section titled “実践例2:樹形図の枝に確率を書く”赤3個・白2個の玉から戻さず2個取り出し、「ちょうど1個が赤」の確率を求めます。最初の色によって、次に残る玉が変わります。
2回目 赤 2/4 → 赤・赤1回目 赤 3/5 ─┤ 白 2/4 → 赤・白
赤 3/4 → 白・赤1回目 白 2/5 ─┤ 白 1/4 → 白・白一つの経路をたどるときは、その時点の条件の下での確率を掛けます。例えば赤・白は、最初に赤を取る3/5と、その後の残り4個から白を取る2/4を掛けて3/10です。
| 経路 | 確率 |
|---|---|
| 赤・赤 | 3/5 × 2/4 = 3/10 |
| 赤・白 | 3/5 × 2/4 = 3/10 |
| 白・赤 | 2/5 × 3/4 = 3/10 |
| 白・白 | 2/5 × 1/4 = 1/10 |
「ちょうど1個が赤」は赤・白と白・赤の二つです。両方の経路が同時に起こることはないので、3/10 + 3/10 = 3/5と足せます。赤・白だけを数えて終わらず、条件に合う順序をすべて拾うことが大切です。
四つの経路の合計は1です。この確認は、枝の書き忘れや残り個数の誤りを見つける助けになります。色だけで分けた枝の確率は同じとは限らないため、四つの色の並びを各1/4としないようにします。
実践例3:「少なくとも」を余事象で簡単にする
Section titled “実践例3:「少なくとも」を余事象で簡単にする”公平なさいころを独立に3回投げ、「少なくとも1回6が出る」確率を求めます。6が1回だけ、2回、3回のそれぞれを数える方法もありますが、組み合わせが多くなります。
反対の出来事は「一度も6が出ない」です。各回で6以外が出る確率は5/6なので、3回とも6以外の確率は(5/6) × (5/6) × (5/6) = 125/216。求める確率は、
約42.1%です。「1回だけ6が出る」と「少なくとも1回6が出る」は条件が違います。また、1/6を3回分足した1/2は答えになりません。複数回6が出る結果を重複して数えるためです。
余事象を使うときは、元の条件とその反対で、すべての結果を重複なく二つに分けているかを確認します。「少なくとも1回」の反対は「多くても1回」ではなく「0回」です。
実践例4:公平なくじでも、順番が遅い人は不利なのか
Section titled “実践例4:公平なくじでも、順番が遅い人は不利なのか”当たり1枚・外れ2枚のくじを、Aさん、Bさんの順に戻さず引きます。最初はよく混ぜ、どの券も同じ確率で選ばれるとします。
Aさんが当たる確率は1/3です。Bさんについては、Aさんが当たりならBさんは当たれず、Aさんが外れなら残り2枚中1枚が当たりです。したがって、Bさんが当たる確率は(2/3) × (1/2) = 1/3で、引く前には同じです。
ただし、実際にAさんが外れを引いたと分かった後では、Bさんが次に当たる確率は1/2です。「まだ何も引いていないときの確率」と「途中の結果を知った後の確率」を混同しないようにします。樹形図を使うと、この条件の変化が分かります。
計算した確率を現実でどう読むか
Section titled “計算した確率を現実でどう読むか”当たりの確率が20%でも、5回で必ず1回当たるわけではありません。毎回戻して独立に引けば、5回とも外れることもあります。確率は、一回の結果や少数回の回数を保証する数字ではありません。
また、さいころなら公平さと独立性、玉なら十分に混ぜて各玉が同じように選ばれることなど、計算の前提があります。現実にその条件が成り立つかを確かめてから、計算結果を当てはめます。
確率の問題を解く手順
Section titled “確率の問題を解く手順”何を一つの結果として数えるかを決め、全体を樹形図や表で整理します。各結果が同様に確からしければ個数の比を取り、そうでなければ枝ごとの確率を考えます。次に条件に合う結果を漏れなく選び、必要に応じて余事象を使います。最後に0〜1の範囲か、数え漏れや重複がないかを確認しましょう。
- 公平なさいころ1個で、5以上が出る確率はいくつですか。
- 公平な硬貨を独立に3回投げて、少なくとも1回表が出る確率はいくつですか。
- 赤2個・白3個から戻さず2個取り出すとき、赤、白の順となる確率はいくつですか。
解答・解説
- 5・6の2通りなので2/6 = 1/3です。
- 全部裏の確率は1/2 × 1/2 × 1/2 = 1/8。余事象を使って7/8です。
- 2/5 × 3/4 = 3/10。赤を取った後も白は3個、全体は4個です。