6. クロス集計表
何のためにクロス集計表を使うのか
Section titled “何のためにクロス集計表を使うのか”学校で朝食について調べ、100人のうち78人が「食べた」と答えたとします。全体の78%という数字から、学校全体の様子は分かります。しかし、朝食を食べる習慣を支援したいとき、「どの学年にも同じ働きかけをすればよいのか」という疑問には答えられません。
そこで、回答を学年別に分けます。一つの項目だけで全体をまとめる集計に、もう一つの分類を加え、集団ごとの違いを調べるのがクロス集計です。学年と朝食、店舗と購入の有無、通学手段と遅刻の有無など、「誰・どの集団で、どの回答や結果が多いか」を知りたいときに使います。
この章では、まず人数の表を作り、次に目的に合った割合へ直し、最後に「この結果から何を言えるか」を考えます。学習用のデータはすべて架空です。
例題1:個々の回答から表を作る
Section titled “例題1:個々の回答から表を作る”問題:体験会の案内は学年ごとに変えるべきか
Section titled “問題:体験会の案内は学年ごとに変えるべきか”1年生と2年生、計10人に体験会への参加希望を聞きました。学年によって希望の傾向が違うか、最初に人数を整理しましょう。
| 生徒 | 学年 | 参加希望 |
|---|---|---|
| A | 1年 | あり |
| B | 1年 | なし |
| C | 2年 | あり |
| D | 1年 | あり |
| E | 2年 | なし |
| F | 2年 | なし |
| G | 1年 | あり |
| H | 2年 | あり |
| I | 2年 | なし |
| J | 2年 | あり |
手順1:行と列の分類を決める
Section titled “手順1:行と列の分類を決める”行に学年、列に参加希望を置きます。各生徒は、学年と回答の組み合わせに対応する場所に1人として数えます。例えばAさんは「1年・あり」、Eさんは「2年・なし」です。
手順2:組み合わせごとに数える
Section titled “手順2:組み合わせごとに数える”| 学年 | 希望あり | 希望なし | 合計 |
|---|---|---|---|
| 1年 | 3 | 1 | 4 |
| 2年 | 3 | 3 | 6 |
| 合計 | 6 | 4 | 10 |
表の一つ一つの区画をセルと呼びます。この例では全員が一つの回答を選んでいるので、各人は四つのセルのどこか一つに入ります。行・列の合計を計算し、どちらから足しても全体の10人になることを確かめます。
手順3:問いに合った比較をする
Section titled “手順3:問いに合った比較をする”希望者は両学年とも3人です。しかし1年は4人中3人で75%、2年は6人中3人で50%。必要な席の数を考えるなら人数、学年ごとの希望の傾向を比べるなら割合を見ます。この違いが、人数表から割合の表を作る理由です。
この10人だけの結果で全校の傾向を断定することはできません。実際の案内を決めるなら、対象を広げたり、希望しない理由を聞いたりする次の調査につなげます。
例題2:朝食の調査を人数で読む
Section titled “例題2:朝食の調査を人数で読む”クロス集計表(2次元の度数分布表)は、二つの項目の組み合わせごとに度数を示す表です。次は学年と朝食の有無を調べた架空のデータです。
| 学年 | 食べた | 食べなかった | 合計 |
|---|---|---|---|
| 1年 | 36 | 4 | 40 |
| 2年 | 42 | 18 | 60 |
| 合計 | 78 | 22 | 100 |
36は「1年生かつ朝食を食べた」人数です。行・列それぞれの合計と全体の合計が一致するか確認します。
行比率:「各学年の中で」を比べる
Section titled “行比率:「各学年の中で」を比べる”行の合計を分母にします。「各学年の中で、食べた割合」を比べるときに使います。
| 学年 | 食べた | 食べなかった | 合計 |
|---|---|---|---|
| 1年 | 36 ÷ 40 = 90% | 4 ÷ 40 = 10% | 100% |
| 2年 | 42 ÷ 60 = 70% | 18 ÷ 60 = 30% | 100% |
食べた人数は2年の方が多いですが、学年内の割合は1年の方が高いと分かります。母数が違う集団を比較するときは人数だけを見ないようにします。
なぜ行合計で割るのか
Section titled “なぜ行合計で割るのか”1年生の行だけを取り出すと40人が一つの全体です。その40人を「食べた36人」「食べなかった4人」に分けているので、割合の合計は100%になります。
1年の食べた割合は36 ÷ 40 × 100、2年は42 ÷ 60 × 100です。「それぞれの学年が100人だったら、食べた人は何人に相当するか」と考えると、90人対70人として比較できます。
ただし、割合に直すと元の人数が見えにくくなります。90%が9人中ではなく40人中の36人から計算されたことが分かるよう、報告では元の人数も併記します。人数が少ない集団では、1人の違いが割合を大きく変えるためです。
列比率:「その回答をした人の中で」を調べる
Section titled “列比率:「その回答をした人の中で」を調べる”列の合計を分母にします。「食べた人の中で1年生が占める割合」は36 ÷ 78 ≈ **46.2%**です。「食べなかった人の中で1年生が占める割合」は4 ÷ 22 ≈ **18.2%**です。
一方、「全体の中で、1年生かつ食べた人の割合」は36 ÷ 100 = **36%**です。同じ36人でも、分母によって問いが変わります。
例えば、朝食を食べなかった生徒向けに相談会を開くなら、その22人のうち何人が各学年なのかを知ると準備に役立ちます。1年が4人、2年が18人なので、2年は18 ÷ 22 × 100 ≈ 81.8%です。
一方、「2年生には食べない人がどれくらいいるか」という問いなら18 ÷ 60 = 30%です。81.8%と30%は矛盾しません。前者は食べなかった22人、後者は2年生60人という、別の集団を全体にしているためです。
分母を選ぶ練習:問いを文章で分解する
Section titled “分母を選ぶ練習:問いを文章で分解する”「何の中で」を先に囲み、「そのうち、何に当てはまるか」を考えると分母を選べます。
| 知りたいこと | 全体にする集団(分母) | 条件に合う人数(分子) | 答え |
|---|---|---|---|
| 1年生の中で食べた割合 | 1年生40人 | 1年かつ食べた36人 | 90% |
| 食べた人の中で1年生の割合 | 食べた78人 | 1年かつ食べた36人 | 約46.2% |
| 全回答者の中で1年かつ食べた割合 | 全体100人 | 1年かつ食べた36人 | 36% |
「行だから行比率」と機械的に覚えるより、問いが指定する全体を探しましょう。行と列を入れ替えて表を作れば、同じ意味の割合が列比率になることもあります。分類の置き方が変わっても、答えたい問いと分母は変わりません。
例題3:人数が多い店舗の方が選ばれやすいのか
Section titled “例題3:人数が多い店舗の方が選ばれやすいのか”広告から来店した人が商品を買ったかどうかを、2店舗で調べました。
| 店舗 | 購入した | 購入しなかった | 来店者合計 |
|---|---|---|---|
| A店 | 30 | 70 | 100 |
| B店 | 24 | 36 | 60 |
| 合計 | 54 | 106 | 160 |
問い1:購入者数が多い店舗はどちらですか。 A店の30人がB店の24人より多く、購入した人に渡す袋の数などを考えるときに役立ちます。
問い2:来店者のうち購入した割合が高い店舗はどちらですか。 A店は30 ÷ 100 = 30%、B店は24 ÷ 60 = 40%。こちらはB店が高くなります。
問い3:この結果だけで、B店の接客が優れていると言えますか。 言えません。商品の種類や価格、来店目的、調査した曜日などが異なるかもしれません。割合は比較の出発点ですが、違いの原因を自動的に説明するものではありません。
報告文なら「今回の調査では、購入者数はA店が多かった。一方、来店者に対する購入割合はA店30%、B店40%で、B店が10パーセントポイント高かった。原因を検討するには、商品や来店条件も確認する必要がある」と書けます。
全体の割合は、割合の単純平均とは限らない
Section titled “全体の割合は、割合の単純平均とは限らない”店舗全体の購入割合は54 ÷ 160 = **33.75%**です。A店30%とB店40%を足して2で割った35%にはなりません。A店とB店で来店人数が違うからです。
全体を求めるときはいったん人数に戻り、分子同士・分母同士を足してから割ると確実です。これは人数の異なる集団の平均とも共通する考え方です。
集計する前に確認すること
Section titled “集計する前に確認すること”回答が空欄の人を「食べなかった」に混ぜると意味が変わります。無回答を別の区分にするか、回答がある人だけを分母にするかを決め、表の注記に書きます。
また、「好きな活動をすべて選ぶ」のような複数回答では、同じ人が複数の列に入ります。この場合、列の人数の合計は回答者数を超えることがあります。本章の例は、一人が一つの区分だけに入る単一回答です。
比率を小数第1位に丸める場合は、途中では丸めず、最後に丸めます。丸めた割合の合計が100%からわずかにずれることもあります。
比較と結論の注意
Section titled “比較と結論の注意”1年の90%と2年の70%の差は20パーセントポイントです。1年の割合が2年に比べて何%高いかという相対的な差は、(90 − 70) ÷ 70 × 100 ≈ 28.6%となり、別の量です。
学年と朝食の有無に関連が見られても、その表だけで学年が朝食の習慣の原因とは言えません。調査日や対象者の選び方にも注意します。
- 2年生の中で食べなかった割合はいくつですか。
- 食べなかった人の中で2年生が占める割合はいくつですか。
- 全体の中で2年生かつ食べなかった割合はいくつですか。
解答・解説
- 18 ÷ 60 = 30%。行比率です。
- 18 ÷ 22 ≈ 81.8%。列比率です。
- 18 ÷ 100 = 18%。分母は全体です。「何の中で」と言葉にしてから計算しましょう。
応用問題:アンケート結果から案内を考える
Section titled “応用問題:アンケート結果から案内を考える”文化祭の企画について調べました。1年生は60人中18人、2年生は40人中20人が科学展示を希望しました。
- クロス集計表を作ってください。「希望しない」人数も求めましょう。
- 学年ごとの希望率を比べてください。
- 希望者全体のうち2年生が占める割合を求めてください。
- 「2年生の方が科学が好きだ」と結論づけてよいでしょうか。
解答と考え方
| 学年 | 希望する | 希望しない | 合計 |
|---|---|---|---|
| 1年 | 18 | 42 | 60 |
| 2年 | 20 | 20 | 40 |
| 合計 | 38 | 62 | 100 |
- 1年は18 ÷ 60 = 30%、2年は20 ÷ 40 = 50%。2年が20パーセントポイント高いです。
- 20 ÷ 38 × 100 ≈ 52.6%。分母は2年生40人ではなく、希望者38人です。
- 科学展示を希望することと、科学全般が好きなことは同じではありません。今回の対象で「展示の希望率が高かった」と述べるのが適切です。過去の展示体験や、他の選択肢の魅力も関係する可能性があります。
この手法を使うときの手順
Section titled “この手法を使うときの手順”二つの分類を決めて人数を数え、合計が一致するかを確認します。その後、比較したい問いを「○○の中での△△の割合」と書き直し、○○を分母にして計算します。最後に、人数・割合・対象条件を添えて結論を書きましょう。