11. 国際収支・為替と貿易
何のために学ぶか
Section titled “何のために学ぶか”円安は輸出売上を増やしても、輸入原材料費を増やす場合があります。海外取引を予算へ入れるには、為替の表示方法と、価格・数量・資金移動の関係を整理する必要があります。
国際収支を読む
Section titled “国際収支を読む”経常収支は、財・サービスの取引、第一次所得、第二次所得から構成されます。金融収支は対外金融資産・負債の取引、資本移転等収支は資本移転などを扱います。貿易収支だけが国際収支のすべてではありません。
例えば財の収支−20、サービス−10、第一次所得+40、第二次所得−5なら経常収支は+5です。誤差や資本移転等を省略すると、経常黒字は対外純資産の取引による増加に対応します。金融収支の符号は統計の記帳方式に注意し、「資本流入が正」という別表記と混在させません。為替評価による資産残高の増減は、取引フローと区別します。
例題:円建て収支への換算
Section titled “例題:円建て収支への換算”為替を 円/ドルと定義します。Eが100から110へ上がるのは円安です。ドル売上1,000ドル、ドル建て材料費400ドル、国内費用30,000円、数量とドル価格は固定とします。
| 為替 | 円換算売上 | 輸入材料費 | 差引利益 |
|---|---|---|---|
| 100円/ドル | 100,000円 | 40,000円 | 30,000円 |
| 110円/ドル | 110,000円 | 44,000円 | 36,000円 |
この例では利益6,000円増ですが、輸入のみの企業や外貨負債のある企業は違う影響を受けます。数量・契約通貨・価格改定時期・ヘッジを別々に確認します。
実質為替と平価
Section titled “実質為替と平価”外国物価を 、国内物価をPとすると、実質為替を と定義します。この定義ではq上昇が国内財の相対的な割安化です。絶対的購買力平価は同じ財束の価格が等しくなる 。貿易費用や非貿易財・品質差などにより、現実の短期為替と一致するとは限りません。
カバーなし金利平価を、確実な予想為替という単純化で書くと、
国内金利5%、外国金利2%、現在100円/ドルなら、無差別になる将来為替は 円/ドル。国内の高金利は、予想される自国通貨安で相殺される関係です。為替リスクがある現実ではリスクプレミアム等を考慮します。カバー付き平価では将来のスポット予想でなく先物為替を使います。
比較優位と貿易収支の反応
Section titled “比較優位と貿易収支の反応”一定労働投入の例で、A国が1日で小麦10または布5、B国が小麦6または布4を生産できるとします。布1単位の機会費用はAが小麦2、Bが小麦1.5。Aは両方の絶対生産性が高くても、小麦に比較優位、Bは布に比較優位があります。布1を小麦1.5超・2未満で交換できるなら相互に利益を得られます。
円安で貿易収支が改善するかは数量反応次第です。初期の貿易均衡、輸出入の供給が十分弾力的等の標準条件では、輸出入需要の価格弾力性の和が1超というマーシャル=ラーナー条件が目安になります。契約や数量調整の遅れで、当初悪化してから改善するJカーブ効果も考えられます。必ずこの形になるわけではありません。
国内物価が5%上がり、外国物価と名目為替が不変なら、上の定義で実質為替qは何%変化しますか。
解答・解説
より約−4.762%。国内財が相対的に割高になる実質増価です。名目為替だけを見て競争条件が不変とはいえません。