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1. GDP・名目と実質・物価

売上が10%増えても、販売数量が10%増えたとは限りません。単価の上昇でも売上は増えるからです。経済全体の規模を読むときも、金額の増加と、物価の影響を除いた生産の増加を区別します。

ここでは、架空の閉じた簡単な経済を使って、GDP、付加価値、名目・実質の違いを確認します。実際の国民経済計算には、サービスや政府活動、帰属計算なども含まれます。

GDP(国内総生産)は、一定期間に国内で生み出された付加価値を集計する指標です。途中で売買された財を重複して数えないことが重要です。

例えば、農家が小麦を100円で製粉業へ売り、製粉業が小麦粉を180円で製パン業へ売り、製パン業がパンを最終消費者へ300円で売ったとします。他の中間投入、在庫、税などはないとします。

生産段階生産額中間投入付加価値
農家100円0円100円
製粉業180円100円80円
製パン業300円180円120円
合計580円280円300円

GDPへの寄与は300円です。売上の単純合計580円では、中間財の価値を繰り返し数えてしまいます。ここでいう付加価値は、企業会計の利益と同じではありません。

同じ経済活動を、生産された付加価値、分配された所得、最終的な支出の3面から捉えるのが三面等価の考え方です。支出側の基本的な関係は、

Y=C+I+G+X−MY=C+I+G+X-M

CC は民間最終消費、II は民間投資(在庫投資を含む)、GG は政府による最終的な消費・投資、XX は輸出、MM は輸入です。ここでの投資は、設備や住宅・在庫などを指し、株式の購入そのものではありません。輸入は他の項目に含まれた海外生産分を控除するために差し引きます。

ある最終財だけを生産する経済を考えます。

年単価生産数量当年価格で評価した名目GDP
基準年100円100個10,000円
翌年110円105個11,550円

名目GDPの成長率は15.5%です。一方、基準年の価格を固定して翌年の生産を評価すると、

翌年の実質GDP=100×105=10,500円\text{翌年の実質GDP}=100\times105=10{,}500\text{円}

実質成長率は5%です。金額の増加には、生産数量の増加と物価の上昇の両方が含まれていました。

GDPデフレーターと消費者物価指数

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この固定基準年の例でGDPデフレーターを求めると、

GDPデフレーター=名目GDP実質GDP×100=11,55010,500×100=110\text{GDPデフレーター}=\frac{\text{名目GDP}}{\text{実質GDP}}\times100 =\frac{11{,}550}{10{,}500}\times100=110

基準年を100として、物価の水準は10%上がっています。名目成長率15.5%から物価上昇率10%を引くと5.5%ですが、正確な実質成長率は、

greal=1+gnominal1+π−1=1.1551.10−1=0.05g_{\mathrm{real}}=\frac{1+g_{\mathrm{nominal}}}{1+\pi}-1 =\frac{1.155}{1.10}-1=0.05

単純な引き算は、変化率が小さいときの近似です。実際の実質GDPには連鎖方式などが使われ、この例の固定価格計算より複雑になります。

消費者物価指数(CPI)は家計の消費に注目する指標です。GDPデフレーターとは対象や作り方が異なり、輸入消費財の価格変化も同じようには反映されません。目的に合わせて指標を選びます。

管理会計・統計学とのつながり

Section titled “管理会計・統計学とのつながり”

予算と実績の売上差を読むときも、単価と数量を分ける発想が役立ちます。ただし、自社の販売価格と一般物価は別です。CPIで自社売上を割れば販売数量が分かるとは限りません。商品構成の変化にも注意します。

統計検定3級の時系列データでは指数や増減率を、2級の時系列分析では時系列を分析する際の考え方を学べます。

1つの最終財だけの経済で、基準年の単価が200円・数量が50個、翌年の単価が240円・数量が55個でした。翌年の名目GDP、基準年価格での実質GDP、GDPデフレーターを求めてください。

解答・解説

名目GDPは240×55=13,200円、実質GDPは200×55=11,000円、GDPデフレーターは13,200÷11,000×100=120です。基準年のGDPは10,000円なので、名目成長率は32%、実質成長率は10%、物価上昇率は20%です。1.32÷1.20−1=0.10でも確認できます。

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