15. 経済学説と政策評価
何のために学ぶか
Section titled “何のために学ぶか”同じ政策への評価が違うとき、単に学派の名前を覚えるだけでは理由を説明できません。価格・賃金の調整、期待、情報、時間の長さ、ショックの原因を比較します。各学派の内部にも多様なモデルがあるため、以下は学習用の大づかみな整理です。
学説を、前提から比較する
Section titled “学説を、前提から比較する”| 考え方 | 重視する仕組み | 政策を考える際の論点 |
|---|---|---|
| 古典派的な長期モデル | 柔軟な価格、実物要因による供給 | 長期の貨幣中立性、資本・労働・技術 |
| ケインズ的な需要不足モデル | 有効需要、失業、価格・賃金の調整の遅れ | 財政・金融による短期の安定化 |
| マネタリズム | 貨幣、自然失業率、期待の調整 | 長期のインフレ、裁量政策の遅れとルール |
| 新しい古典派 | 合理的期待、最適化、市場調整 | 予想された政策と情報、政策制度の変更 |
| RBC | 技術等の実物ショック、異時点の選択 | 供給側の変動、実物的な調整 |
| ニューケインジアン | 最適化と価格硬直性・不完全競争 | 短期の需要政策、期待と金融政策ルール |
「古典派なら財政は一切無意味」「合理的期待ならどの政策も無効」といった一括した結論は避けます。新しい古典派の一部の政策無効命題にも、情報構造、市場調整等の条件が必要です。現代の多くの分析では、短期の硬直性と長期の供給制約を合わせて考えます。
例題:同じ政府支出増を異なる条件で読む
Section titled “例題:同じ政府支出増を異なる条件で読む”限界消費性向0.8、物価と金利を固定した45度線モデルなら、政府支出20の増加は所得100の増加です。上昇するLMと投資の金利反応を入れた9章の数値例なら約28.571です。潜在産出が固定された長期AD–ASなら、需要増は最終的に生産でなく物価へ反映される条件になります。
結論の違いは計算の不一致ではなく、何を動かせるかの違いです。試験では「短期か長期か」「物価や金利は固定か」「資本移動と相場制度は何か」を先に確認します。
期待、信認と時間的不整合
Section titled “期待、信認と時間的不整合”適応的期待は過去の実績をもとに予想を更新する考え方、合理的期待は利用可能な情報をモデルに整合的に用いる考え方です。合理的期待でもショックによる予測誤差は生じます。
ルーカス批判は、過去の政策制度で推定した行動関係が、制度変更による期待や行動の変化でそのまま使えなくなる可能性を指摘します。過去の回帰係数を政策変更後へ機械的に外挿することに注意を促します。
時間的不整合は、事前に望ましい約束と、約束を信じて人々が行動した後の政策誘因が異なる問題です。例えば低インフレを約束して賃金契約が決まった後に、予想外の需要刺激で雇用を増やしたくなるとします。人々がその誘因を予想すれば、当初から高い物価予想が形成される可能性があります。ルール、コミットメント、制度の信認を考える理由です。
管理会計・統計とのつながり
Section titled “管理会計・統計とのつながり”評価指標や報酬制度を変えると、現場の行動が変わることがあります。過去の売上・費用の関係が新制度でも同じとは限りません。情報と契約や相関と因果の視点を合わせ、モデルの前提を記録して予算を更新します。
「合理的期待とは将来を必ず正確に予測することなので、予測誤差は0」といえますか。
解答・解説
いえません。利用可能な情報に基づいて体系的な誤りをしないというモデル上の条件と、予期できないショックで実際の予測が外れることは両立します。