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3. 貸借対照表の本質的理解

貸借対照表(B/S)は、単なる財産の一覧ではありません。調達した資金が現金、売掛金、在庫、設備等の何に使われているかを表す、事業の蓄積の地図です。売上や利益だけでは見えない資金の固定化と、返済負担を読みます。

資産=負債+純資産\text{資産}=\text{負債}+\text{純資産}

負債は債権者への義務、純資産は資産から負債を控除した残余です。純資産は現金の保管場所ではなく、会社を清算したら必ずその額が株主へ戻るという意味でもありません。

例題:青葉社の資金はどこにあるか

Section titled “例題:青葉社の資金はどこにあるか”

架空企業の簡略B/Sです。単位は万円。固定資産は減価償却控除後、期中の増資・配当はなく、利益以外の純資産変動もないとします。

資産期首期末負債・純資産期首期末
現金預金100125買掛金7080
売掛金80100短期借入金2040
棚卸資産6070長期借入金160180
固定資産(純額)260290純資産250285
合計500585合計500585

期末資産585のうち、現金は125だけです。借入金は220、買掛金は80で、負債合計300。残り285が純資産です。「純資産285が現金125より多いから、お金が足りない」という比較は意味が違います。

期末の資金運用と調達の対応

青葉社の学習用B/S。資産585万円は流動資産295・固定資産290。調達側も負債300・純資産285で585万円となります。

  • 上段:流動資産295+固定資産290
  • 下段:負債300+純資産285
  • 横軸:万円。どちらも合計585
グラフの数値を表で確認する
区分内訳1(万円)内訳2(万円)合計(万円)
資産(流動/固定)295290585
調達(負債/純資産)300285585

学習用のデータ・理論値。狭い画面ではグラフを横にスクロールできます。

営業運転資金を、この例では 売掛金+棚卸資産−買掛金\text{売掛金}+\text{棚卸資産}-\text{買掛金} と定義します。期首70、期末90で20万円増加。回収前の販売や在庫に、仕入先からの信用でまかないきれない資金が多く必要になりました。

売上増でも、回収・在庫・支払の条件によって現金が減ることがあります。この営業運転資金と、流動資産−流動負債で定義する正味運転資本は同じではありません。期末の正味運転資本は295−120=175です。

安全性指標は定義と内容を確認する

Section titled “安全性指標は定義と内容を確認する”
指標本例の計算読み取る視点
流動比率295÷120=約245.8%流動資産と流動負債の対応
当座比率(125+100)÷120=187.5%棚卸資産を除く短期支払余力
自己資本比率285÷585=約48.7%調達のうち自己資本の割合
固定長期適合率290÷(285+180)=約62.4%固定資産を長期資金で支える程度

本例では純資産の全額を自己資本としています。実際の連結B/Sでは非支配株主持分等を区別します。当座資産の対象や固定長期適合率の分母も、利用する資料で確認します。比率に一律の合格点を当てはめず、業種、回収可能性、返済期日、季節性を見ます。回収できない売掛金や陳腐化在庫が多いと、見かけの流動比率だけでは安全といえません。

現金で設備50を買うと、現金−50・固定資産+50。借入40なら現金+40・負債+40。減価償却20なら固定資産−20・費用+20を通じて利益が減ります。掛け販売、利益、回収も含めた1年間の動きを、P/LとCFでつなげます。

期末の売掛金のうち20万円を現金回収したとき、資産合計と営業運転資金はどう変わりますか。

解答・解説

現金+20、売掛金−20なので資産合計585は不変です。営業運転資金は90から70へ減り、現金へ戻ります。この例では回収による新たな利益は発生しません。