15. 1母集団の検定
何のために統計量を使い分けるのか
Section titled “何のために統計量を使い分けるのか”同じ「基準と違うか」でも、平均の違い、ばらつきの違い、割合の違いは別の母数です。母数と分散の既知・未知、正規性、標本の大きさから使う統計量を選びます。
本章は独立な標本を基本とします。標本分散s²は分母n−1。数値例は断らなければ両側5%です。確率点は左側累積で読みます。
母平均:母分散既知のz検定
Section titled “母平均:母分散既知のz検定”正規母集団ならH0の下でN(0,1)です。大標本で近似を使う場合も条件を確認します。既知の母標準偏差10、n = 100、標本平均52.5、H0:μ = 50ならz = 2.5。両側5%の±1.96の外なので棄却、p ≈ 0.0124です。
母平均の推定値は52.5、H0との差は2.5です。棄却したことと、母平均が厳密に52.5であることは違います。
母平均:母分散未知のt検定
Section titled “母平均:母分散未知のt検定”独立な正規標本で使います。少人数の場合は正規性や外れ値に注意します。sを母標準偏差のように扱って、自由度のないz検定へ置き換えないようにします。
例題1:平均20との違いを調べる
Section titled “例題1:平均20との違いを調べる”n = 10、平均22、s = 2、H0:μ = 20です。SE = 2/√10 ≈ 0.6325、t = √10 ≈ 3.162、自由度9です。両側5%の点2.262を超えるので棄却します。p ≈ 0.0115です。
95%信頼区間は22 ± 1.431 = 約20.569〜23.431で、20を含みません。同じ前提の区間と検定の結論が対応していることを確認できます。
母分散:χ²検定
Section titled “母分散:χ²検定”独立な正規母集団が前提です。平均の検定よりも、正規性の崩れの影響を強く受けることがあります。
例題2:ばらつきが基準と違うか
Section titled “例題2:ばらつきが基準と違うか”n = 10、s² = 9、基準分散4ならQ = 9×9/4 = 20.25、自由度9です。両側5%の境界は約2.700と19.023なので、上側の棄却域に入り棄却します。
ここでは両側p値を左右の裾の小さい方の2倍とする方法で、約0.0329です。非対称な分布の両側p値には定義の違いがあるため、問題やソフトの約束を確認します。棄却域を左右α/2ずつに定めた方法と対応させましょう。
H1が分散増大だけなら上側、減少だけなら下側の確率点を使います。分散と標準偏差を混同せず、H0がσ = 2なら分母のσ0²は4です。
母比率:帰無仮説の比率で標準化する
Section titled “母比率:帰無仮説の比率で標準化する”H0:p = p0の下で、np0とn(1−p0)が十分大きい場合の正規近似です。推定で使う標本比率 ではなく、H0の比率を分母に使います。
例題3:賛成率が半分と違うか
Section titled “例題3:賛成率が半分と違うか”200人中120人が賛成、、H0:p = 0.5とします。SE = √(0.25/200) ≈ 0.03536、z ≈ 2.828。両側p値は約0.00468なので5%で棄却します。
この標本で母比率が0.5から異なる根拠が得られましたが、調査対象が全体を代表しない場合、結論を全住民へ広げることはできません。少人数や極端な比率では二項分布で直接確率を計算するなど、正確な方法を検討します。
結論の書き分け
Section titled “結論の書き分け”| 検定結果 | 適切な説明 | 言い過ぎる説明 |
|---|---|---|
| 平均のH0を棄却 | 平均が基準と異なる統計的根拠が得られた | 全員の値が改善した |
| 分散のH0を棄却 | ばらつきが基準と異なる根拠が得られた | 平均も変わった |
| 比率のH0を棄却しない | このデータでは違いを示す根拠が足りない | 母比率が厳密に基準と同じと証明した |
- 正規標本n = 9、平均12、s = 3でH0:μ = 10なら、tと自由度はいくつですか。
- n = 11、s² = 8、H0:σ² = 4ならχ²統計量はいくつですか。
- 母比率の検定で、H0のp0が0.5なのに分母へ標本比率0.6を使ってよいですか。
解答・解説
- t = 2/(3/3) = 2、自由度8です。
- 10×8/4 = 20です。
- 本章の帰無仮説に基づくz検定では使いません。分母はp0から計算します。