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10. AD–ASと物価・生産の調整

売上金額の増加が、販売量増なのか値上がりなのかは、需要と供給の両面から考える必要があります。AD–ASは、IS–LMで固定した物価も変化させて、経済全体の生産と物価の関係を調べます。

総需要ADは、各物価水準で財・貨幣市場などの条件が整合する産出量です。典型的には、物価上昇で実質貨幣供給が減り、金利上昇・需要抑制が起きるため右下がりになります。個別商品の需要曲線と同じ所得・代替効果だけで説明するものではありません。

短期総供給SRASは賃金・価格調整の遅れ等を前提に右上がり、長期総供給LRASは潜在産出量の位置で垂直とするのが標準的な整理です。潜在産出量は持続可能な通常稼働水準で、物理的な最大生産量とは区別します。

学習用に、ADを P=200−0.2YP=200-0.2Y、SRASを P=20+0.1YP=20+0.1Y、潜在産出量を600とします。Pは物価指数です。初期均衡は Y=600,P=80Y=600,P=80。

政府支出増などを抽象化し、ADが P=230−0.2YP=230-0.2Y へ移ると、

230−0.2Y=20+0.1Y⇒Y=700, P=90230-0.2Y=20+0.1Y\quad\Rightarrow\quad Y=700,\ P=90

短期には生産と物価が両方増えます。このSRASをそのまま長期にも固定するわけではありません。

需要拡大と短期・長期の均衡

学習用モデル。初期はY=600・P=80、需要拡大後の短期はY=700・P=90。潜在産出量600へ戻る長期の物価は110です。

  • 青実線:初期AD
  • 青点線:需要増加後AD
  • 橙破線:初期SRAS
  • 灰点線:LRAS(潜在産出600)
グラフの数値を表で確認する
産出量YADのP需要増加後ADのPSRASのP
020023020
40012015060
50010013070
6008011080
700609090
1000030120

学習用のデータ・理論値。狭い画面ではグラフを横にスクロールできます。

潜在産出量を超える生産が賃金・期待物価等の調整を促すと考えると、SRASが上方へ移ります。新ADと Y=600Y=600 から長期物価は110。例えばSRASが P=50+0.1YP=50+0.1Y になれば、需要との交点は600・110です。調整の速度や経路はモデルに依存します。

一方、元のADでSRASが P=50+0.1YP=50+0.1Y へ上がる供給ショックなら、Y=500,P=100Y=500,P=100。生産が減って物価が上がるスタグフレーション型の変化です。需要不足と同じ対応が常に望ましいとは限りません。

需要拡大で長期生産が不変という結果は、潜在産出量を一定とした本モデルの条件です。投資・技術・労働参加への影響を含む場合は、LRAS自体の変化も考えます。

需要増による数量拡大と、原材料供給ショックによる価格上昇は、売上・原価へ違う形で現れます。数量差異と価格差異、稼働余力を分けた予算シナリオを作ります。名目と実質も確認してください。

元のADのままSRASが P=35+0.1YP=35+0.1Y へ上がると、生産と物価はいくらですか。

解答・解説

200−0.2Y=35+0.1Y200-0.2Y=35+0.1Y より Y=550,P=90Y=550,P=90。初期より生産は50減り、物価は10上がります。

学習ガイド