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6. 分散・標準偏差と標準化

何のために散らばりを数値化するのか

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二つの窓口の平均待ち時間がどちらも10分でも、一方は8〜12分、もう一方は2〜18分なら、予定の立てやすさは違います。平均は中心を示しますが、一人一人の値がそこからどれくらい離れているかは表しません。

分散・標準偏差は、平均からの離れ方をすべてのデータを使って測る指標です。範囲が両端だけを使うのに対し、こちらは各値の偏差を使います。計算後には、元の単位でばらつきを読むか、平均に対する比で比較するかを選びます。

データ 2,4,4,6 の平均は4です。各値から平均を引いた偏差は −2,0,0,2。合計は0です。偏差の合計は、どんなデータでも正確な計算では0になるため、足すだけでは散らばりを表せません。

そこで偏差を2乗して正負を打ち消し、その平均を取ります。データ数を nn とすると、記述統計の分散・標準偏差は、

v=1n∑i=1n(xi−xˉ)2,s=vv=\frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}(x_i-\bar x)^2, \qquad s=\sqrt v

です。本章の ss は分母 nn の分散の平方根を意味します。推測の章で使う不偏分散とは区別します。

値平均4からの偏差偏差の2乗
2−24
400
400
624
合計08

分散は8/4 = 2、標準偏差は 2≈1.414\sqrt2\approx1.414 です。値の単位が分なら、分散は平方分、標準偏差は分になります。標準偏差は元の量と同じ単位で散らばりを表せることが利点です。ただし、個々の値の平均からの距離が必ず1.414分という意味ではありません。

計算を整理する別の式は、

v=1n∑xi2−xˉ2v=\frac{1}{n}\sum x_i^2-\bar x^2

です。例では(4 + 16 + 16 + 36)/4 − 16 = 18 − 16 = 2になります。丸めた平均を途中で使うと誤差が出るため、なるべく最後に丸めます。

手元のデータそのものの散らばりを表す本章の分散は、分母が nn です。母集団の分散を標本から推定するときには、

u2=1n−1∑(xi−xˉ)2u^2=\frac{1}{n-1}\sum(x_i-\bar x)^2

という不偏分散を用いることがあります。同じ例なら8/3 ≈ 2.667です。母平均の代わりに標本平均を使うことで生じる過小評価を補うため、分母を調整しています。問題やソフトウェアで何を求めているかを確認し、二つの定義を途中で混ぜないようにします。

全員に5点を加えると、平均も5点上がりますが、平均からの距離は同じなので分散・標準偏差は変わりません。すべての値を3倍にすると、偏差も3倍、偏差の2乗は9倍になるので、分散は9倍、標準偏差は3倍です。

一般に y=ax+by=ax+b なら、

yˉ=axˉ+b,vy=a2vx,sy=∣a∣sx\bar y=a\bar x+b,\qquad v_y=a^2v_x,\qquad s_y=|a|s_x

です。センチメートルをメートルに換算するときも、この関係を使えます。単位を変えて数値が小さくなっても、実物のばらつきが減ったわけではありません。

例題3:偏差値で、集団の中の位置を比べる

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A試験は平均60点・標準偏差10点、B試験は平均70点・標準偏差5点でした。どちらも80点のとき、集団内での相対的な位置はどう違うでしょうか。

まず、平均から標準偏差何個分離れているかを、標準化得点で表します。

z=x−xˉs,T=50+10zz=\frac{x-\bar x}{s},\qquad T=50+10z

TT が偏差値です。Aは z=2z=2、偏差値70。Bは z=2z=2、偏差値70で、今回の条件では同じ位置です。一方、Bの75点なら z=1z=1、偏差値60です。

偏差値50は平均、60は平均より標準偏差1個分上です。「偏差値60だから上位何%」と厳密に言うには分布の形も必要です。標準偏差が0の場合は、この式の標準化はできません。

例題4:変動係数で、平均に対する散らばりを見る

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小さな容器の内容量が平均100mL・標準偏差5mL、大きな容器が平均500mL・標準偏差15mLだったとします。絶対的な標準偏差は大きな容器の方が大きいですが、平均に対する相対的な散らばりはどうでしょうか。

CV=sxˉ\mathrm{CV}=\frac{s}{\bar x}

小容器は5/100 = 0.05(5%)、大容器は15/500 = 0.03(3%)。相対的には小容器の方がばらついています。これが変動係数を使う目的です。

通常、正の平均を持ち、意味のある0がある比例尺度で使います。平均が0に近いと不安定になり、摂氏温度のように0の取り方が任意の間隔尺度では、単純な比較に適しません。

  1. 1,3,5 の平均、分母nの分散、標準偏差を求めてください。
  2. 標準偏差2のデータをすべて4倍して10を加えると、標準偏差はいくつですか。
  3. 平均50・標準偏差10の試験で65点の偏差値はいくつですか。平均200・標準偏差8の変動係数も求めてください。
解答・解説
  1. 平均3、偏差の2乗和8なので分散8/3、標準偏差 8/3≈1.633\sqrt{8/3}\approx1.633 です。
  2. 8です。4倍で4倍になり、10を加えても変わりません。
  3. 50+10(65−50)/10=6550+10(65-50)/10=65。変動係数は8/200 = **0.04(4%)**です。

QC検定3級の基本統計量では、平方和・不偏分散・標準偏差を実計算します。QC教材の分散Vと、このブログで用いる分散の記号の対応も確認できます。工程能力Cp・Cpkでは、ばらつきを規格幅と比較します。