10. 差額原価収益分析
何のために必要か
Section titled “何のために必要か”製品別損益が赤字でも、撤退すると会社全体の利益が減ることがあります。意思決定で重要なのは、将来の収益・原価のうち選択肢によって変わる部分です。過去の支出や共通費配賦を、そのまま判断へ持ち込まないようにします。
関連・無関連と機会費用
Section titled “関連・無関連と機会費用”差額原価・差額収益は選択肢間の差です。すでに支出し回収不能な埋没費用、どちらの案でも変わらない費用は差額へ含めません。固定費でも回避可能なら関連し、変動費でも両案で同額なら差額は0です。
機会費用は、選択のため失う最善の代替案の価値です。帳簿の支出として記録されなくても判断へ含めます。帳簿から無関連費用を消すという意味ではありません。
例題①:余力のある追加受注
Section titled “例題①:余力のある追加受注”注文100個・単価1,500円、追加変動費900円/個、段取り20,000円、他の仕事を失わないとします。
| 項目 | 追加受注の差額 |
|---|---|
| 収益 | +150,000円 |
| 変動費 | −90,000円 |
| 段取り費 | −20,000円 |
| 機会費用 | 0円 |
| 増分利益 | +40,000円 |
同じ設備で別注文の限界利益50,000円を失うなら、増分利益は−10,000円です。数量だけでなく、制約と代替用途を確認します。ミクロ経済学の機会費用には比較表とチャートがあります。通常顧客への価格影響・品質・納期等も無視できません。
例題②:内製か購入か
Section titled “例題②:内製か購入か”1,000個の部品について、内製変動費800円/個、内製をやめれば回避できる固定費150,000円、内製すると失う他用途の利益100,000円、購入価格1,100円/個とします。
| 選択肢 | 関連する費用 |
|---|---|
| 内製 | 800,000+150,000+100,000=1,050,000円 |
| 購入 | 1,100,000円 |
この条件では内製が50,000円有利。どちらでも残る設備償却や共通管理費は差額へ含めません。購入案にも検品・物流・供給停止リスクなどの追加費用があれば加えます。品質・知識の維持や将来の交渉力も考慮します。
例題③:赤字部門の撤退
Section titled “例題③:赤字部門の撤退”売上1,000,000円、変動費600,000円、撤退で回避できる固定費250,000円、配賦共通費200,000円の部門は、表示利益−50,000円です。共通費は撤退後も残るとします。
撤退では売上100万円を失い、変動費60万円と固定費25万円を節約するので、全社利益は150,000円減ります。共通費の配賦がなくなっても、会社全体の支出が減るわけではありません。空いた能力を使い180,000円の利益が得られるなら、撤退・転用の差額は+30,000円です。
追加加工と制約資源の配分
Section titled “追加加工と制約資源の配分”共同工程までの原価は、分離後に売るか追加加工するかでは変わらない場合があります。追加加工による売上増250,000円、追加費用200,000円なら差額利益50,000円。共同原価の配賦額をもう一度差し引かないようにします。
能力に制約があるなら、単位限界利益だけでなく制約資源1単位当たりで比べます。Aは限界利益800円・10分、Bは900円・15分なら、Aは80円/分、Bは60円/分。単一制約・需要上限等の条件下ではAを先に作る方が有利です。複数制約なら線形計画等で同時に考える必要があります。
長期の意思決定へ広げる
Section titled “長期の意思決定へ広げる”短期の増分利益だけで継続価格や設備投資を決めません。複数年の増分キャッシュフロー、税、運転資金、残存価値、割引率をそろえて正味現在価値を考えます。ABCの活動配賦は問題発見に役立ちますが、意思決定では資源・支出が本当に変わるかを再確認します。
内製例の機会費用だけが200,000円になると、どちらがいくら有利ですか。
解答・解説
内製関連費用1,150,000円、購入1,100,000円で購入が50,000円有利です。能力の代替用途によって結論が逆転します。