16. 欠測・打ち切り・切断
3種類を区別する
Section titled “3種類を区別する”欠測は値が記録されていないこと。右打ち切りは「少なくともここまでは続いた」と分かること。切断(トランケーション)は、条件を満たさない対象がそもそも観測標本に入らないことです。異なる情報を同じ欠測値として処理すると推論が歪みます。
欠測機構がなぜ必要か
Section titled “欠測機構がなぜ必要か”観測の有無 が値にも共変量にも依存しなければMCAR、観測済み情報で条件付けると未観測値に依存しなければMAR、未観測値への依存が残ればMNARです。MARは観測データだけから一般に検証できる性質ではありません。
たとえば所得が高い人ほど無回答なら、回答者平均は母集団平均を過小評価し得ます。年齢など観測変数で無回答を十分説明できると仮定するMARと、未観測の所得自体に依存するMNARでは必要なモデルが変わります。完全ケース解析はMCARなら多くの場面で扱いやすい一方、精度を失い、一般のMARで常に正当化されるわけではありません。
多重代入の例
Section titled “多重代入の例”不確実性を反映した補完データを 個作り、それぞれの推定値 と分散 を統合します。
なら 、SEは約2.309。単一補完して通常のSEだけ出すと、補完間の不確実性を落とします。代入モデルと解析モデルの整合性、MNARに対する感度分析も必要です。
打ち切りの尤度
Section titled “打ち切りの尤度”観測時間 、イベント指標 に対し、独立な非情報的右打ち切りの下では、寿命母数に関係する尤度は
指数分布なら 。観測時間2、3、5で最初の2人がイベント、最後が打ち切りなら 。打ち切りを5でのイベントとして数えると0.3となり誤りです。
切断の尤度とLOCF
Section titled “切断の尤度とLOCF”の対象だけ観測する左切断では密度は に条件付けます。打ち切りの生存寄与とは異なります。繰り返し測定で最後の値を繰り越すLOCFは、その後一定という強い仮定を暗黙に置きます。脱落を無害にはせず、混合モデル・多重代入などと仮定を比較します。
10年後まで追跡したが発症しなかった人は、発症時間10年としてよいか?
解答・解説
右打ち切りであり、分かるのは発症時間が10年より長いことです。尤度には ではなく を寄与させます。