11. 経営理念と経営ビジョン
管理会計の前に、何を目指すかを決める
Section titled “管理会計の前に、何を目指すかを決める”管理会計は目標を達成するための情報を作ります。しかし、目標が「売上を増やす」だけでは、値引き、無理な受注、品質低下も同じ方向に見えてしまいます。顧客・従業員・取引先へどのような価値を届け、どんな状態を実現したいかを明確にすることが出発点です。
理念・ビジョン・戦略の役割
Section titled “理念・ビジョン・戦略の役割”| 要素 | 問い | 架空企業「青葉社」の例 |
|---|---|---|
| 経営理念・ミッション | なぜ存在し、誰に何を届けるか | 地域の製造業へ、必要な部品を安心して届ける |
| ビジョン | 将来どの状態を目指すか | 3年後、小口でも安定供給できる地域のパートナーになる |
| 価値観・行動指針 | 判断に迷ったとき何を重視するか | 品質・安全を守り、問題を隠さず共有する |
| 戦略 | 何を選び、どこに資源を使うか | 小口対応と納期の見える化に集中する |
| 計画・指標 | 何をいつまでに、どう測るか | 月次の納期遵守率・処理時間・顧客別利益を確認する |
用語の使い方は企業によって異なります。名称よりも、目的・将来像・選択・実行の関係が説明できることが重要です。
例題:短納期と利益をどう両立するか
Section titled “例題:短納期と利益をどう両立するか”青葉社は「注文後2日以内に出荷」というビジョンを立てました。しかし全顧客・全商品に無条件で適用すれば、特急配送費、残業、余剰在庫が増える可能性があります。
- 顧客が本当に必要とする納期と、価格に対する評価を聞く。
- 商品・顧客ごとに注文頻度、段取り回数、在庫・配送の活動を記録する。
- 標準便と短納期便の原価、限界利益、必要な能力を分けて計画する。
- 納期遵守率だけでなく、誤出荷率、残業時間、資金と顧客別利益を合わせて確認する。
顧客への価値を測り、それを支える活動を原価へつなぐという考え方です。著書の売上計画にある商品・取引先別の分解も、誰に何を届けるかを数量へ落とす入口になります。固変分解は、その活動の費用を計画する際に役立ちます。
理念を予算と評価へ反映する
Section titled “理念を予算と評価へ反映する”理念を掲げても、予算で品質・教育に必要な時間を認めず、売上件数だけで評価すると、行動が理念と逆になる場合があります。指標の定義、目標、責任者、測定方法、予算と見直し時期を決め、指標同士の衝突を検討します。
理念の実現を一つの数値で完全に測ることはできません。定性的な顧客の声や安全上の懸念も、定量指標とあわせて扱います。BSCで複数の視点を整理します。
「納期遵守率100%」だけで部門を評価すると、どんな問題が起こり得ますか。
解答・解説
無理な残業、品質確認の省略、過大な安全在庫、利益の出ない特急対応などが隠れる場合があります。品質・安全、能力、顧客価値、費用・利益も一緒に確認します。