20. 統計ソフトウェアの出力を読む
何のために出力を読む力が必要なのか
Section titled “何のために出力を読む力が必要なのか”ソフトウェアは、選んだ手順の計算を行います。しかし、対応があるデータに独立二群の手順を指定しても、結果の数字は出てしまいます。計算できたことと、問いに合う分析ができたことは別です。
出力を読む前に、対象、知りたい母数、独立・対応、分散や分布の前提、片側・両側、欠測の扱いを確認します。その後に推定値・SE・区間・統計量・自由度・p値をつなげて読みます。
例題1:同じ人の前後を比較した出力
Section titled “例題1:同じ人の前後を比較した出力”5人の改善後−改善前の差が 1,2,1,3,3。差の平均が0かを、差の正規性を仮定する両側t検定で調べました。
| 出力 | 値 | 意味 |
|---|---|---|
| n | 5 | 独立な対象の組数 |
| mean difference | 2.0 | 改善後−改善前の標本平均 |
| standard error | 0.4472 | 差の平均のSE |
| t | 4.4721 | 平均差0からSE何個分離れたか |
| df | 4 | 組数−1 |
| p-value | 約0.0111 | H0の下での両側の極端さ |
| 95% CI | 約0.758〜3.242 | 母平均差の区間 |
「母平均差0を5%で棄却し、差は正の方向と推定された」と説明できます。ただし、前後の違いに時間経過などが混ざる設計なら、新しい方法だけの因果効果とは断定できません。
差を逆向きに作れば、平均差・t・区間の符号は反転し、両側p値は同じです。出力の差の定義を確認する理由です。
実際に数値を再現する例
Section titled “実際に数値を再現する例”PythonとSciPyを利用する環境では、差の一標本t検定として次のように計算できます。
from scipy import stats
difference = [1, 2, 1, 3, 3]result = stats.ttest_1samp(difference, popmean=0)print(result.statistic, result.pvalue, result.df)# 約4.4721、0.0111、4変数に入っている数値が差なのか、改善後の値だけなのかを間違えないようにします。標本分散の再計算でも、分母nとn−1の設定(例えばddof)を確認してください。
例題2:重回帰の出力を読む
Section titled “例題2:重回帰の出力を読む”次は30件・説明変数2個・切片ありの架空の整合的な出力例です。目的変数は得点、xは学習時間、DはB群なら1、A群なら0とします。
| 係数 | 推定値 | SE | t | 両側p(約) |
|---|---|---|---|---|
| 切片 | 10 | 2.6904 | 3.7170 | 0.000931 |
| x | 2 | 0.2673 | 7.4833 | 0.0000000475 |
| D | 5 | 2.3094 | 2.1651 | 0.0394 |
この例は、各群でxが1〜15を取り、xと直交する誤差を加えた学習用データから再計算できる結果です。表示は丸めています。残差自由度27、SST = 3,507.5、SSE = 1,080で、R² ≈ 0.6921、調整済みR² ≈ 0.6693、残差分散40です。全体のFは(2,427.5/2)/(1,080/27) = 30.34375、自由度2・27です。
xの係数2は、群が同じなら学習時間1増加に対する予測得点2の差。Dの係数5は、学習時間が同じならB群がA群より予測で5高いことを意味します。係数とSEの比がtになっているか、自由度がn−k−1になっているかも確認できます。
R²が約0.692だから「69.2%の予測が当たる」ではありません。また、p値が小さいことと因果効果の証明は別です。残差プロットと多重共線性、対象範囲も確認します。
例題3:分散分析表の整合性を確認する
Section titled “例題3:分散分析表の整合性を確認する”群間平方和24・自由度2、群内平方和6・自由度6なら、平均平方は12と1、F = 12です。全体平方和30、自由度8で合計が一致します。p = 0.008なら、5%で母平均がすべて等しい仮説を棄却します。
「どの群が違うか」はこの表だけからは分かりません。平均表、図、必要な多重比較へ進みます。出力の表の値が何から割られて作られたかを確認できれば、列の読み違いを防げます。
問題解決へつなげる報告文
Section titled “問題解決へつなげる報告文”問い、データの集め方、使った方法と前提、推定値と区間、統計量・自由度・p値、限界、次に調べることの順にまとめます。結論をp値一つで終わらせず、実際に重要な差か、別の対象へ広げられるかも説明します。
- 「p = 0.02なので改善幅は大きい」とだけ結論づけてよいですか。
- n = 30・説明変数2個・切片ありの回帰の残差自由度はいくつですか。
- 係数3・SE1.5・帰無値0のtは何ですか。出力のtが0.5なら何を確認しますか。
解答・解説
- 適切ではありません。差の推定値・区間・単位と実用上の重要性が必要です。
- 27です。
- 2です。行・列の読み違い、別の帰無値、標準誤差の定義などを確認します。