コンテンツにスキップ

9. 最強力検定・尤度比・検出力

有意水準を小さくするだけなら、何も棄却しない検定で達成できます。必要なのは、第一種過誤を制御しつつ、重要な対立仮説の下で棄却する確率(検出力)を高くすることです。p値は帰無仮説の正しさの確率でも、効果の大きさでもありません。

単純仮説 H0:f0H_0:f_0 と H1:f1H_1:f_1 の比較では、f1(x)/f0(x)>cf_1(\boldsymbol x)/f_0(\boldsymbol x)>c の領域を棄却域にすると、水準を制約した中で最強力になります(ネイマン・ピアソンの補題)。等号部分で無作為化が必要な場合もあります。

Xi∼N(μ,1)X_i\sim N(\mu,1)、H0:μ=0,H1:μ=δ>0H_0:\mu=0,H_1:\mu=\delta>0 なら尤度比の対数は nδXˉ−nδ2/2n\delta\bar X-n\delta^2/2。Xˉ\bar X に単調増加なので、水準0.05の棄却域は nXˉ>1.6449\sqrt n\bar X>1.6449。

π(μ)=1−Φ(1.6449−nμ).\pi(\mu)=1-\Phi(1.6449-\sqrt n\mu).

μ=0\mu=0 で0.05、n=25,μ=0.5n=25,\mu=0.5 で約0.8038。第二種過誤は約0.1962です。このモデルではすべての δ>0\delta>0 に同じ形の検定が最強力なので、片側の複合対立に対しても一様最強力になります。両側問題では同じ結論は一般に成り立ちません。

標本数と検出力

分散1の正規平均を片側5%で検定する理論曲線。青実線n=10、橙破線n=25。帰無値0では両方0.05。

  • 青実線:n=10
  • 橙破線:n=25
  • 灰色点線:有意水準0.05
グラフの数値を表で確認する
真の平均μn=10の検出力n=25の検出力
00.050.05
0.20.1556740.259511
0.40.3519940.63876
0.50.4745990.803765
0.60.5996780.912314
0.80.8119130.990742
10.935420.999603

学習用のデータ・理論値。狭い画面ではグラフを横にスクロールできます。

正則な1母数モデルで H0:θ=θ0H_0:\theta=\theta_0 を検定すると、次は帰無仮説の下で漸近的に χ12\chi^2_1 に従います。

D=2{ℓ(θ^)−ℓ(θ0)},W=(θ^−θ0)2In(θ^),S=Un(θ0)2/In(θ0).\begin{aligned} D&=2\{\ell(\hat\theta)-\ell(\theta_0)\},\\ W&=(\hat\theta-\theta_0)^2I_n(\hat\theta),\\ S&=U_n(\theta_0)^2/I_n(\theta_0). \end{aligned}

尤度比は2つの最適値、Waldは推定値からの距離、スコアは帰無値での傾きを使います。有限標本では一致しません。成功8/10で p0=0.5p_0=0.5 なら D≈3.8549,W=5.625,S=3.6D\approx3.8549,W=5.625,S=3.6。境界や少数例では、正確検定やシミュレーションによる較正も検討します。

片側水準 α\alpha、検出したい差 δ\delta、既知標準偏差 σ\sigma に対し、検出力 1−β1-\beta を確保する近似標本数は n≥{(z1−α+z1−β)σ/δ}2n\ge\{(z_{1-\alpha}+z_{1-\beta})\sigma/\delta\}^2。差0.5、σ=1\sigma=1、水準5%、検出力80%なら切り上げて25です。データを見た後の「観測された検出力」より、設計時の差の根拠と区間幅が重要です。

検出力0.8とは、帰無仮説が80%の確率で誤っているという意味か?

解答・解説

違います。指定した対立仮説が真のときに、検定が棄却する確率です。効果量・標本数・有意水準によって変わります。