9. 最強力検定・尤度比・検出力
検定を最適化するとは
Section titled “検定を最適化するとは”有意水準を小さくするだけなら、何も棄却しない検定で達成できます。必要なのは、第一種過誤を制御しつつ、重要な対立仮説の下で棄却する確率(検出力)を高くすることです。p値は帰無仮説の正しさの確率でも、効果の大きさでもありません。
単純仮説 と の比較では、 の領域を棄却域にすると、水準を制約した中で最強力になります(ネイマン・ピアソンの補題)。等号部分で無作為化が必要な場合もあります。
例題:正規平均の片側検定
Section titled “例題:正規平均の片側検定”、 なら尤度比の対数は 。 に単調増加なので、水準0.05の棄却域は 。
で0.05、 で約0.8038。第二種過誤は約0.1962です。このモデルではすべての に同じ形の検定が最強力なので、片側の複合対立に対しても一様最強力になります。両側問題では同じ結論は一般に成り立ちません。
分散1の正規平均を片側5%で検定する理論曲線。青実線n=10、橙破線n=25。帰無値0では両方0.05。
- 青実線:n=10
- 橙破線:n=25
- 灰色点線:有意水準0.05
チャートを読み込んでいます。数値は本文・表でも確認できます。
グラフの数値を表で確認する
| 真の平均μ | n=10の検出力 | n=25の検出力 |
|---|---|---|
| 0 | 0.05 | 0.05 |
| 0.2 | 0.155674 | 0.259511 |
| 0.4 | 0.351994 | 0.63876 |
| 0.5 | 0.474599 | 0.803765 |
| 0.6 | 0.599678 | 0.912314 |
| 0.8 | 0.811913 | 0.990742 |
| 1 | 0.93542 | 0.999603 |
学習用のデータ・理論値。狭い画面ではグラフを横にスクロールできます。
尤度比・Wald・スコア
Section titled “尤度比・Wald・スコア”正則な1母数モデルで を検定すると、次は帰無仮説の下で漸近的に に従います。
尤度比は2つの最適値、Waldは推定値からの距離、スコアは帰無値での傾きを使います。有限標本では一致しません。成功8/10で なら 。境界や少数例では、正確検定やシミュレーションによる較正も検討します。
設計への使い方
Section titled “設計への使い方”片側水準 、検出したい差 、既知標準偏差 に対し、検出力 を確保する近似標本数は 。差0.5、、水準5%、検出力80%なら切り上げて25です。データを見た後の「観測された検出力」より、設計時の差の根拠と区間幅が重要です。
検出力0.8とは、帰無仮説が80%の確率で誤っているという意味か?
解答・解説
違います。指定した対立仮説が真のときに、検定が棄却する確率です。効果量・標本数・有意水準によって変わります。