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12. 標本分布と区間推定

何のために区間で推定するのか

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ある集団から100人を無作為に選んだところ、平均得点が52点だったとします。別の100人なら51点や53点かもしれません。標本平均52点は母平均を考える手がかりですが、それだけでは推定の不確実さが伝わりません。

点推定は標本平均や標本比率など、一つの値で推定することです。区間推定では、抽出による変動を考えた方法で範囲を作ります。その基礎になるのが標本分布と標準誤差です。

標本分布は「個々のデータの分布」と違う

Section titled “標本分布は「個々のデータの分布」と違う”

母集団から同じ大きさnの標本を何度も取り、毎回平均を計算すると、平均もばらつきます。この統計量のばらつき方を標本分布と呼びます。100人の得点の分布と、100人平均を繰り返し求めたときの分布を区別しましょう。

独立な同一分布からの標本で、母平均が μ\mu、母分散が σ2\sigma^2 なら、

E(Xˉ)=μ,V(Xˉ)=σ2n,SE(Xˉ)=σnE(\bar X)=\mu,\qquad V(\bar X)=\frac{\sigma^2}{n}, \qquad \mathrm{SE}(\bar X)=\frac{\sigma}{\sqrt n}

です。SEは標準誤差、つまり統計量の標準偏差です。個々の値の標準偏差が10点でも、n = 100の平均の標準誤差は1点になります。

母集団が正規分布なら標本平均も正規分布です。正規でなくても、独立性や有限な分散などの条件の下でnが十分大きければ、中心極限定理により標本平均を正規分布で近似できます。極端な裾や偏りがある場合、必要な標本の大きさも変わります。

母平均の95%信頼区間:母標準偏差が既知の場合

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正規性または標本平均の正規近似が使え、母標準偏差 σ\sigma が分かっているとき、

xˉ±1.96σn\bar x\pm1.96\frac{\sigma}{\sqrt n}

で95%信頼区間を作れます。1.96は標準正規分布の中央約95%を挟む値です。信頼係数を変えれば、この係数も変わります。

例題1:n=100で平均得点を推定する

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独立な無作為標本100人の平均が52点、母標準偏差が既知で10点とします。標準誤差は10/10 = 1点、誤差幅は1.96点なので、

52±1.96=[50.04, 53.96]52\pm1.96=[50.04,\ 53.96]

です。「母平均をこの方法で推定した95%信頼区間は50.04〜53.96点」と報告します。これは個々の生徒の得点の95%が入る範囲ではありません。

例題2:人数を4倍にすると幅はどう変わるか

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同じ母標準偏差でn = 400、標本平均も52だったとすると、標準誤差は10/20 = 0.5点。区間は52 ± 0.98 = 51.02〜52.98点です。

母平均の95%信頼区間:標本の大きさと幅

母標準偏差10、標本平均52を共通にした比較。n=100の区間は50.04〜53.96、n=400では51.02〜52.98。点は標本平均、線分は信頼区間です。

  • 点:標本平均52
  • 線分:母平均の95%信頼区間
グラフの数値を表で確認する
標本の大きさn標本平均母標準偏差95%下限95%上限
100521050.0453.96
400521051.0252.98

学習用のデータ・理論値。狭い画面ではグラフを横にスクロールできます。

標準誤差は 1/n1/\sqrt n に比例するので、幅を半分にするには標本の大きさを4倍にします。ただし、調査の偏りを小さくする話とは別です。偏った集め方のまま人数を増やしても、全体に当てはめられるとは限りません。

実際には母標準偏差が分からないことも多く、標本から計算した不偏分散 u2u^2 を使います。大標本では xˉ±1.96u/n\bar x\pm1.96u/\sqrt n という近似を使えますが、小標本で無条件に同じ式を使えるわけではありません。

補足として、母集団が正規分布で独立な標本なら、母分散未知の区間には自由度n−1のt分布の係数を使います。n = 10、平均50、不偏標準偏差4なら、95%の係数約2.262を使い、50 ± 2.262 × 4/√10 ≈ 47.14〜52.86です。3級の学習では、まず既知・未知と、問題で指定された前提や係数を区別しましょう。

独立な成功・失敗をn人分調べ、成功人数をX、標本比率を p^=X/n\hat p=X/n とします。母比率をpとすると、

E(p^)=p,V(p^)=p(1−p)n,SE(p^)=p(1−p)nE(\hat p)=p,\qquad V(\hat p)=\frac{p(1-p)}{n}, \qquad \mathrm{SE}(\hat p)=\sqrt{\frac{p(1-p)}n}

です。母比率が同じでも、標本比率は毎回変わります。成功・失敗の見込まれる数が十分大きい場合、標本比率の分布を正規近似します。

無作為に選んだ400人中220人が案に賛成しました。標本比率は220/400 = 0.55です。母比率は未知なので、標準誤差の推定に p^\hat p を代入します。

p^±1.96p^(1−p^)n=0.55±1.960.55×0.45400≈[0.5012, 0.5988]\hat p\pm1.96\sqrt{\frac{\hat p(1-\hat p)}n} =0.55\pm1.96\sqrt{\frac{0.55\times0.45}{400}} \approx[0.5012,\ 0.5988]

約**50.1〜59.9%**です。0.0488という誤差幅は約4.88パーセントポイントであり、「55%の4.88%」ではありません。この方法は正規近似による区間で、少人数や割合が0・1に近い場合には精度に注意が必要です。

95%とは、同じ抽出と区間作成の手続きを繰り返すと、作られる区間のおよそ95%が固定された真の母数を含む、という方法の性質です。実際に一度得た区間は真の値を含むか含まないかのどちらかで、「母数が95%の確率で動いてその範囲に入る」という意味ではありません。

また、ここでの区間は抽出による偶然の変動を表すもので、誘導的な質問や無回答の偏りまで自動的に含むものではありません。標本が母集団の大きな割合を占める非復元抽出では、標準誤差に有限母集団の補正が必要になることがあります。本章の基本式は独立な標本、または母集団に比べ標本が十分小さい状況を想定しています。

  1. 母標準偏差12、n = 36のとき、標本平均の標準誤差はいくつですか。
  2. 母標準偏差が既知で10、n = 100、標本平均60なら、母平均の95%信頼区間はいくつですか。
  3. 標本の大きさを100から900にすると、同じ条件で標準誤差は何倍ですか。
解答・解説
  1. 12/√36 = 2です。
  2. 60 ± 1.96なので、58.04〜61.96です。
  3. √100/√900 = 1/3倍です。人数に反比例するのではなく、平方根に反比例します。