16. 2母集団の検定
何のために比較の構造を確認するのか
Section titled “何のために比較の構造を確認するのか”同じ人の前後、別々の店の来客、異なる製品のばらつきでは、比べる母数とデータの依存関係が違います。「二群だからt」と決めるのではなく、何の差・比か、独立か、何を既知とするかを先に整理します。
平均差のH0はμ1−μ2 = δ0。通常δ0 = 0ですが、基準となる差が指定される場合は分子からその差を引きます。
母平均の差:既知分散のz検定
Section titled “母平均の差:既知分散のz検定”独立な正規二群、または適切な正規近似で、
です。既知分散9と16、各n = 25、平均差2、δ0 = 0ならSE = 1、z = 2。両側p ≈ 0.0455で5%では棄却します。
母分散未知で等分散を仮定:プールt検定
Section titled “母分散未知で等分散を仮定:プールt検定”正規二群が独立で共通の母分散を持つとき、
です。 は2母集団の推定で求めた自由度加重の分散です。
例題1:平均21と19を比較する
Section titled “例題1:平均21と19を比較する”各n = 10、標本分散4と4、平均21と19なら、プール分散4、SE ≈ 0.894、t ≈ 2.236、自由度18。両側p ≈ 0.03825で、5%では棄却します。
同じ前提による平均差の95%区間は約0.121〜3.879です。両方の平均の区間を別々に眺めるのではなく、差そのものを評価します。
等分散を仮定しない:Welchのt検定
Section titled “等分散を仮定しない:Welchのt検定”近似自由度は推定の章のWelch–Satterthwaite式を使います。正規性の条件の下で、母分散が等しいという仮定を置かずに平均を比較します。
n1 = 10、n2 = 20、平均21と19、分散4と16なら、SE ≈ 1.095、t ≈ 1.826、自由度約27.98。両側p ≈ 0.0786で5%では棄却しません。
分散の事前検定が有意でないから等分散が証明された、とは言えません。どの前提を置くかは設計や背景に基づいて選び、結果を見て都合よく手法を切り替えないようにします。
対応あり:差に対する1標本t検定
Section titled “対応あり:差に対する1標本t検定”同じ対象の前後なら、各組の差Dを作り、、自由度n−1で考えます。独立な対象間の差が正規分布に従うことが基本の前提です。
差が1・2・1・3・3なら平均2、sD = 1、t = 2√5 ≈ 4.472、自由度4、両側p ≈ 0.0111。この記録では平均差0を棄却します。差を作る前の二群それぞれの正規性と、差の正規性は同じ条件ではありません。
母分散比:F検定
Section titled “母分散比:F検定”独立な正規二群のH0:σ1²/σ2² = θ0に対して、
です。等分散ならθ0 = 1。n1 = n2 = 10、分散9と4ではF = 2.25、自由度9・9です。両側5%では、下側0.025点と上側0.975点の間にあり棄却しません。左右の小さい裾を2倍する定義のp値は約0.2428です。
大きい分散を分子にする方法を使う場合でも、自由度の対応と片側・両側の水準をそろえます。正規性が崩れるとF検定は影響されやすいため注意します。
母比率差:等しい比率の下でプールする
Section titled “母比率差:等しい比率の下でプールする”独立二群でH0:p1 = p2を検定するとき、共通比率の推定値を、
として、
で評価します。各群の期待される成功・失敗が十分多いことが必要です。
各200人中120人と90人なら、共通比率210/400 = 0.525、SE ≈ 0.04994、z ≈ 3.004、両側p ≈ 0.00267で棄却します。差は15パーセントポイントです。区間推定のSEでは各群の標本比率を別々に使った違いを確認してください。
選ぶ手順をまとめる
Section titled “選ぶ手順をまとめる”平均差なら、対応の有無を確認し、独立なら分散既知・未知、未知なら等分散の仮定を区別します。分散比はF、独立な二群の比率差は正規近似zを候補にします。同じ人の二つの0・1回答などは独立二群ではないので、この比率差検定を無条件に使えません。
- 同じ10人の前後差のt検定の自由度はいくつですか。
- n1 = 8、n2 = 12で等分散のプールt検定をするとき、自由度はいくつですか。
- 比率差0の検定で、共通比率を作る際に二つの標本比率を単純平均してよいですか。
解答・解説
- 9です。
- 8+12−2 = 18です。
- 人数が異なるなら適切ではありません。成功人数の合計を標本人数の合計で割ります。