コンテンツにスキップ

31. 医薬生物学:生存時間・繰り返し測定

イベントが起きなかった人の情報も使う

Section titled “イベントが起きなかった人の情報も使う”

追跡終了まで発症しなかった人には、発症時間が追跡時間より長いという情報があります。除外すると短い時間のイベントばかり残り、平均時間を過小評価しがちです。Kaplan–Meier法はイベント直前のリスク集合を分母にして条件付き生存率を掛けます。

S^(t)=∏tj≤t(1−djnj).\hat S(t)=\prod_{t_j\le t}\left(1-\frac{d_j}{n_j}\right).

時刻1にイベント、2に打ち切り、3にイベント、4にイベント、5に打ち切りとします。イベント時の (nj,dj)(n_j,d_j) は (5,1),(3,1),(2,1)(5,1),(3,1),(2,1)。

S^(1)=4/5=0.8,S^(3)=(4/5)(2/3)=8/15,S^(4)=(8/15)(1/2)=4/15.\hat S(1)=4/5=0.8,\quad \hat S(3)=(4/5)(2/3)=8/15,\quad \hat S(4)=(8/15)(1/2)=4/15.

打ち切り時点では曲線は下がらず、その後のリスク集合から外れます。同時刻のイベント・打ち切りの規則は解析実装で確認します。この例では初めて0.5以下になる時刻4が推定生存中央値です。曲線が0.5に達しなければ中央値は観測範囲から推定できません。

Kaplan–Meier曲線と打ち切り

架空の5人。1・3・4でイベント、2・5で打ち切り。橙の印が打ち切りで、その時点では生存率は下がらない。

  • 青実線:Kaplan–Meier推定値
  • 橙の+:打ち切り
グラフの数値を表で確認する
時刻イベント/打ち切り直前リスク人数直後生存率
1イベント50.8
2打ち切り40.8
3イベント30.533333
4イベント20.266667
5打ち切り10.266667

学習用のデータ・理論値。狭い画面ではグラフを横にスクロールできます。

独立な非情報的打ち切りが重要な仮定です。Greenwoodの近似分散は S^(t)2∑dj/[nj(nj−dj)]\hat S(t)^2\sum d_j/[n_j(n_j-d_j)]。群比較のlog-rank検定は各イベント時点の観測数と期待数を合計して比較します。ハザードが交差すると単一の検定だけでは違いを捉えにくいことがあります。

Coxモデル h(t∣x)=h0(t)exTβh(t\mid x)=h_0(t)e^{x^T\beta} は基準ハザードを特定せず共変量効果を表します。β=log⁡0.7\beta=\log0.7 なら、他の条件が同じとき瞬間ハザード比0.7。生存確率がいつでも0.7倍、という意味ではありません。

同時イベントがない場合の部分尤度は ∏i:δi=1exiTβ/∑k∈R(ti)exkTβ\prod_{i:\delta_i=1}e^{x_i^T\beta}/\sum_{k\in R(t_i)}e^{x_k^T\beta}。各イベントがそのリスク集合の誰に起きたかを比較します。比例性、時間依存効果、交絡を点検します。ハザード比だけでなく生存率・追跡期間・リスク人数も示します。

同じ人の測定値は相関します。混合モデル Yit=β0+β1t+bi+εitY_{it}=\beta_0+\beta_1t+b_i+\varepsilon_{it} にランダム切片を入れれば、同一人の共分散は Var⁡(bi)\operatorname{Var}(b_i)。個体間分散4、測定誤差分散1なら級内相関は4/5です。必要に応じランダム傾きや時点間残差相関を入れます。GEEは母集団平均効果を扱う別のアプローチです。

LOCFは最後の観測値を繰り越す単純補完で、脱落後に変化しないと仮定します。混合モデルも欠測仮定に依存するため、多重代入やMNAR感度分析を含めて検討します。

KM曲線が0.6のまま追跡終了した場合、中央値を最後の観測時間と報告してよいか?

解答・解説

中央値は未到達です。追跡範囲では0.5に達しておらず、最後の時刻を中央値とする根拠はありません。