20. 事業部の業績評価
事業の評価と、責任者の評価を分ける
Section titled “事業の評価と、責任者の評価を分ける”事業を継続・拡大するかという判断と、事業部長が権限の範囲でどの程度成果を出したかという評価は、同じではありません。本社が決めた共通費・設備や、市場の急変を本人が短期に管理できない場合があるからです。
原価センター、利益センター、投資センターに分けて権限と責任を設計し、顧客・品質・人材も含む指標を組み合わせます。組織論とBSCが土台になります。
セグメント利益と共通費
Section titled “セグメント利益と共通費”事業部の売上100万円、変動費60万円、部門の個別固定費25万円、本社共通費の配賦20万円とします。限界利益40万円、個別固定費控除後は15万円、共通費配賦後は−5万円です。
本教材では、個別固定費控除後15万円を「貢献利益」と呼ぶ場合がありますが、この用語は限界利益と同義で使う資料もあります。用語の特集で定義を確認してください。共通費配賦後の赤字でも、その共通費が撤退後に残るなら、事業撤退で全社利益は15万円減ります。事業部利益と、特定の意思決定で変わる利益を区別します。
例題:ROIだけでは投資を断ることがある
Section titled “例題:ROIだけでは投資を断ることがある”投下資本の平均1,000万円、事業利益200万円の部門のROIは20%。期全体を通じて追加資本200万円を投じ、利益30万円が増える投資案のROIは15%です。新しい平均投下資本を1,200万円、利益230万円とすると、
部門ROIは20%から低下します。しかし会社の要求利益率が10%なら、追加投資の利益30万円は要求額20万円を10万円上回ります。ROIだけで評価される部門長は、会社にとって望ましい可能性のある投資を見送る誘因を持ちます。
学習例では投資前の部門ROI20%、追加投資のROI15%、投資後の部門ROI約19.17%。追加投資は部門ROIを下げますが、要求率10%を上回ります。
- 青:投資前・投資後の部門ROI
- 橙:追加投資単体のROI
- 灰破線:要求率10%。追加投資は要求率を上回るが、投資後の部門ROIは低下
チャートを読み込んでいます。数値は本文・表でも確認できます。
グラフの数値を表で確認する
| 対象 | 利益(万円) | 投下資本(万円) | ROI(%) |
|---|---|---|---|
| 投資前の部門 | 200 | 1000 | 20 |
| 追加投資 | 30 | 200 | 15 |
| 投資後の部門 | 230 | 1200 | 19.166666666666668 |
学習用のデータ・理論値。狭い画面ではグラフを横にスクロールできます。
残余利益・EVAと資産の定義
Section titled “残余利益・EVAと資産の定義”残余利益RIを「事業利益−要求利益率×投下資本」と定義すると、投資前は 万円、投資後は 万円です。増加10万円は追加投資の残余利益と一致します。
EVAは、一般に税引後営業利益NOPATから、投下資本に対する資本コストを控除する考え方です。利益と資本の調整や商標としての定義は利用する資料で確認します。RI・EVAは絶対額なので、事業規模の違いも考慮します。ROIの分母に期末・期首・平均、帳簿価額・総投資額のどれを使うかで結果は変わります。
減価償却で帳簿価額が下がると、同じ利益でもROIが上がる場合があります。維持投資を先送りして短期ROIを高める副作用も確認します。事業固有のリスクと資本コスト、期間の整合を明示します。
内部振替価格と全社最適
Section titled “内部振替価格と全社最適”部門間で部品を取引する際、売り手の変動費300円、外部販売価格500円とします。外販を諦めるほど能力がいっぱいで、外販1個の限界利益200円を失うなら、売り手の最低受入額は追加費用300+機会費用200=500円です。
余力があり他の仕事を失わず、追加費用が300円だけなら最低額は300円。買い手が外部から500円で調達でき、品質・追加費用等が同じなら、300〜500円が交渉の候補となります。外部取引を実際に行える能力・数量・品質、契約上の条件を確認します。
追加資本100万円、追加利益12万円、要求率10%の投資案の残余利益はいくらですか。
解答・解説
12−100×10%=2万円。既存部門のROIを下げるかどうかとは別に、要求額を上回ります。ただし期間・リスク・CF等の確認は必要です。