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3. 観察研究と実験

毎日練習する生徒ほど計算テストの得点が高かったとします。練習の効果かもしれませんが、もともと計算が得意な生徒ほど練習を続けやすかった可能性もあります。観察された関連だけでは、何が原因なのかを分けにくいのです。

実験では、研究者が条件を変えて、その結果を比較します。特定の働きかけによって結果が変わるかを確かめることが目的です。比較する相手を置き、他の条件の違いをできるだけ小さくすることが重要です。

研究の種類何をするか計算練習の例
観察研究すでにある行動や状態と結果を記録する普段の練習時間と得点を調べる
実験研究条件・働きかけを割り当てて結果を調べる新しい練習法と従来の練習法を割り当てて比べる

新しい働きかけを受ける集団を処理群、比較の基準になる集団を対照群といいます。対照群が何も行わないとは限りません。従来の方法や、別の条件を実施することもあります。

例題1:新しい練習法の効果を調べる

Section titled “例題1:新しい練習法の効果を調べる”

40人を新しい練習法20人と従来法20人に分け、2週間後に同じテストで比べたいとします。

希望者だけが新しい方法を使うと、意欲の強さが結果に影響するかもしれません。また、成績のよい生徒を処理群に集めると、終了時の点数が高くても練習法の効果とは言いにくくなります。

くじなどで40人を20人ずつに割り当てます。この無作為割付は、集団の特性の違いを偶然に任せ、意図的な偏りを減らす方法です。ただし、少人数では偶然に得意な人が偏ることもあるため、割付前の得点なども確認します。

練習期間、1日の時間、テストの難しさや採点方法をそろえます。新しい方法だけ30分、従来法は5分なら、「方法」の違いと「練習時間」の違いを分けられません。参加しなくなった生徒の記録も残します。

例題2:結果をどう読めばよいか

Section titled “例題2:結果をどう読めばよいか”

次の架空の結果を得たとします。

群人数実施前の平均実施後の平均平均の変化
新しい方法2060点72点+12点
従来法2060点66点+6点

新しい方法の群は12点上がりましたが、それだけで「12点すべてが新しい方法の効果」とは言えません。テストへの慣れや、授業そのものの影響で、従来法の群も6点上がっています。

二つの群の平均の変化の差は12 − 6 = 6点です。適切に割り付け、他の条件をそろえた実験であれば、新しい方法の効果を考える材料になります。ただし、ここでは得点の散らばりが示されていないので、この差が偶然の変動で説明できるかまでは判断できません。仮説検定で、その考え方を学びます。

標本の抽出と、条件の割付を区別する

Section titled “標本の抽出と、条件の割付を区別する”

母集団から誰を調べるかを選ぶのが無作為抽出、参加者の誰にどの条件を与えるかを選ぶのが無作為割付です。目的が違います。

例えば、希望者40人を二つの群に無作為に割り付ければ、参加者の中での比較はしやすくなります。しかし、希望していない人も含む全校生徒に効果が当てはまるかは別の問題です。実験が適切かと、どこまで一般化できるかを分けて考えます。

すべてを実験できるわけではありません。過去の出来事を調べる、長期間の生活習慣と結果を調べるなど、観察研究が適する問いもあります。ただし、睡眠・意欲・元の能力といった別の要因が、練習量と得点の両方に関係する可能性を考えます。

記録された「関連」をそのまま「原因」としないことは、相関と因果にもつながります。データを使う際は、どのように得られた記録なのかを必ず確認しましょう。

  1. 普段の通学手段と体力テストの関係を記録するのは観察研究と実験研究のどちらですか。
  2. 新しい方法と従来法を比べる実験で、従来法を行う群を何と呼びますか。
  3. 「新しい方法の参加者は全員希望者、従来法は残りの生徒」という比較の問題点を説明してください。
解答・解説
  1. 条件を割り当てず記録しているので観察研究です。
  2. 対照群です。比較のために従来法という条件を与えています。
  3. 元の意欲や能力が違う可能性があります。得点の差に、方法の違いと参加者の違いが混ざります。条件を無作為に割り当てるなど、設計の改善を考えます。