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1. 需要・供給と価格

「原価が上がったので値上げしたい」。しかし、原価から希望価格を計算するだけでは、その価格で何個売れるかは分かりません。需要・供給のモデルは、買いたい数量と売りたい数量が価格を通じて調整される仕組みを考える道具です。

ここでは、多数の買い手・売り手がいる単一市場を扱い、品質、所得、関連商品の価格などを一定とします。個別企業の価格戦略をそのまま説明するモデルではありません。

価格を PP(百円/個)、1日当たりの需要量を QdQ_d、供給量を QsQ_s(いずれも個/日)として、学習用に次を仮定します。

Qd=100−2P,Qs=20+2PQ_d=100-2P,\qquad Q_s=20+2P

この需要式では、価格が100円上がると需要量が2個減ります。供給式では、価格が100円上がると供給量が2個増えます。あくまで、この例で仮定した関係です。

価格需要量供給量状態
1,000円(P=10)80個40個買いたい量が40個多い
2,000円(P=20)60個60個需要と供給が一致
3,000円(P=30)40個80個売りたい量が40個多い

均衡では Qd=QsQ_d=Q_s なので、

100−2P=20+2P⇒P=20,Q=60100-2P=20+2P\quad\Rightarrow\quad P=20,\quad Q=60

均衡価格は2,000円、均衡数量は1日60個です。価格の単位が百円なので、答えを20円にしないように注意します。

需要・供給と市場均衡

学習用の理論モデル。横軸は数量、縦軸は価格(百円/個)。需要の実線と供給の破線が、数量60・価格20で交わります。

  • 青実線:需要 P=50−Q/2
  • 橙破線:供給 P=Q/2−10
  • 黒丸:均衡 Q=60、P=20
グラフの数値を表で確認する
価格P(百円/個)需要量(個/日)供給量(個/日)
010020
108040
206060
304080
4020100
500120

学習用のデータ・理論値。狭い画面ではグラフを横にスクロールできます。

図は慣例に従って横軸を数量、縦軸を価格にしています。そのため、描画する式は P=50−Q/2P=50-Q/2 と P=Q/2−10P=Q/2-10 です。右下がり・右上がりという形だけでなく、どちらの軸が何を表すかを確認しましょう。

価格の変化と、需要曲線の移動は違う

Section titled “価格の変化と、需要曲線の移動は違う”

価格だけが変わるときは、同じ需要曲線の上で数量が変わります。一方、所得や好みの変化などで「同じ価格でも買いたい量が増える」と、需要曲線そのものが移動します。

① 価格だけの変化:同じ曲線の上を動く

Section titled “① 価格だけの変化:同じ曲線の上を動く”

元の需要式 Qd=100−2PQ_d=100-2P のまま、価格が2,000円から3,000円へ上がると、需要量は60個から40個へ減ります。需要曲線はそのままで、点がAからBへ移動します。この比較は需要量の反応を示すもので、AとBがともに市場均衡という意味ではありません。

価格変化による需要曲線上の移動

同じ需要曲線上で、価格20・数量60のAから、価格30・数量40のBへ移動。価格の単位は百円/個です。所得・好みなどの条件は一定とします。

  • 青実線:同じ需要曲線 Q=100−2P
  • 矢印A→B:価格上昇による需要量の減少
  • 供給・市場均衡の変化はこの図では扱いません
グラフの数値を表で確認する
点価格P(百円/個)需要量Q(個/日)
A:価格変更前2060
B:価格変更後3040

学習用のデータ・理論値。狭い画面ではグラフを横にスクロールできます。

② 需要そのものの変化:曲線が右へ移る

Section titled “② 需要そのものの変化:曲線が右へ移る”

所得や好みなどの変化によって、同じ価格で買いたい数量が増えた場合です。需要式が Qd=100−2PQ_d=100-2P から Qd=120−2PQ_d=120-2P へ変わると、どの価格でも需要量が20個増えます。例えば価格4,000円の横線を見ると、20個から40個へ増え、曲線全体が右へ移動していることが分かります。

例えば需要式が Qd=120−2PQ_d=120-2P に変わり、供給式は変わらないとすると、

120−2P=20+2P⇒P=25,Q=70120-2P=20+2P\quad\Rightarrow\quad P=25,\quad Q=70

均衡価格は2,500円、数量は70個へ増えます。「値上げしたから数量が増えた」のではなく、需要の変化によって価格と数量の両方が変わったと解釈します。

需要曲線の右への移動と、新しい市場均衡

需要D₀からD₁へ右に移動し、供給Sは不変。同じ価格40では需要量20→40。市場均衡はE₀(数量60・価格20)からE₁(数量70・価格25)へ変わります。価格は百円/個です。

  • 青実線:元の需要D₀
  • 青破線:増加後の需要D₁
  • 橙点線:変わらない供給S
  • 丸E₀・E₁:変化前後の市場均衡
グラフの数値を表で確認する
価格P(百円/個)元の需要量D₀(個/日)移動後の需要量D₁(個/日)供給量(個/日)
010012020
108010040
20608060
25507070
30406080
402040100
50020120

学習用のデータ・理論値。狭い画面ではグラフを横にスクロールできます。

2つの図を比べると、①は「需要曲線を固定した価格と数量の比較」、②は「需要曲線の移動によって決まる均衡の変化」です。何を一定にしているかを確認すると、両者を区別できます。

管理会計・統計学とのつながり

Section titled “管理会計・統計学とのつながり”

管理会計は原価や利益を整理し、経済学は顧客や市場の反応を考える枠組みを与えます。原価情報と需要の情報を組み合わせることが、価格を考える出発点です。ただし、自社の需要は別途調査・推定する必要があります。

価格と売上数量のデータには、季節・広告・競合なども影響します。相関と因果や回帰分析で学ぶように、観測された関係を、そのまま値上げの因果効果とみなすことはできません。

需要が Qd=90−PQ_d=90-P、供給が Qs=30+PQ_s=30+P のとき、均衡価格と数量を求めてください。価格の単位は百円/個とします。

解答・解説

90−P=30+P90-P=30+P より P=30P=30、Q=60Q=60。均衡価格は3,000円、数量は60個です。両方の式へ代入し、同じ数量になることを確認します。

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