4. 単回帰と予測
何のために直線で要約するのか
Section titled “何のために直線で要約するのか”相関係数は直線的な関連の強さですが、xが1増えたときのyの変化や、特定のxでの予測値は示しません。回帰直線は、xからyの平均的な傾向を表すために使います。
予測値は観測値と異なります。どの部分を直線で説明でき、どの部分が残ったかを確認するのが2級での重要な視点です。
例題:5組のデータへ最小二乗法を使う
Section titled “例題:5組のデータへ最小二乗法を使う”xが1・2・3・4・5、yが2・4・5・4・5とします。平均は3と4、偏差の積和は6、xの偏差の2乗和は10です。
残差 の2乗和を最小にする直線は です。最小にしているのはy方向の差であり、点から直線への最短距離の2乗和ではありません。
観測は5点、予測はy=2.2+0.6x。縦の破線が残差。x=3では観測5、予測4、残差1です。
- 青点:観測値
- 橙線:予測y=2.2+0.6x
- 縦の破線:残差
チャートを読み込んでいます。数値は本文・表でも確認できます。
グラフの数値を表で確認する
| 人 | 時間x | 観測y | 予測y | 残差 |
|---|---|---|---|---|
| A | 1 | 2 | 2.8 | -0.8 |
| B | 2 | 4 | 3.4 | 0.6 |
| C | 3 | 5 | 4 | 1 |
| D | 4 | 4 | 4.6 | -0.6 |
| E | 5 | 5 | 5.2 | -0.2 |
学習用のデータ・理論値。狭い画面ではグラフを横にスクロールできます。
傾き0.6はxが1増えたとき予測yが0.6増えることを示します。単位を伴う指標で、相関係数とは異なります。観察記録なら、介入の効果とは断定できません。
変動を説明された部分と残りに分ける
Section titled “変動を説明された部分と残りに分ける”切片を含む最小二乗回帰では、
が成り立ちます。SSTは全変動、SSRは回帰で説明した変動、SSEは残差変動です。記号の使い方が逆のソフトや教材もあるので、名称と定義も確認します。
例題はSST = 6、予測値2.8・3.4・4.0・4.6・5.2からSSR = 3.6、残差−0.8・0.6・1.0・−0.6・−0.2からSSE = 2.4です。
決定係数0.6は、標本内のyの変動の60%をこの回帰が説明したという意味です。「60%の確率で予測が正しい」ではありません。切片を含む単回帰では です。
分散分析表と残差標準誤差
Section titled “分散分析表と残差標準誤差”| 変動 | 平方和 | 自由度 | 平均平方 |
|---|---|---|---|
| 回帰 | 3.6 | 1 | 3.6 |
| 残差 | 2.4 | n−2 = 3 | 0.8 |
| 全体 | 6.0 | n−1 = 4 | — |
切片と傾きを推定したため、残差の自由度はn−2です。残差分散の推定値は 、残差標準誤差は約0.894です。yの元の単位で、直線の周囲のばらつきを表します。
回帰のF比は3.6/0.8 = 4.5ですが、数値だけで有意とは決めず、自由度1・3のF分布と比較します。係数の検定は第18章で扱います。
残差プロットをどう読むか
Section titled “残差プロットをどう読むか”横軸を予測値やx、縦軸を残差にして確認します。0の周りに特定のパターンなく散らばるか、曲線になっていないか、値が大きいほど散らばりが広がる漏斗型でないかを見ます。時系列なら、残差が時間的につながっていないかも確認します。
曲線状なら線形性、漏斗型なら等分散性に疑問があります。正の量の関係で対数変換を検討することもありますが、変換後は係数の意味も変わります。例えば ならxが1増えるとyのモデル上の倍率は で、単純な加算ではありません。
平均的な傾向の推定と、一件の予測
Section titled “平均的な傾向の推定と、一件の予測”x = 3の予測値は4ですが、次の一人が必ず4になるわけではありません。平均応答の信頼区間は直線の位置の不確実さ、個々の新しい観測の予測区間はそれに個体差も加わります。通常、予測区間の方が広くなります。
観測範囲1〜5の外への予測は外挿です。同じ直線が続く根拠はなく、標本内のR²が高くても、遠い範囲や別の集団の予測精度は保証されません。
- SST = 100、SSE = 30ならR²はいくつですか。
- 切片を含む単回帰でn = 12、SSE = 40なら残差分散はいくつですか。
- 残差プロットがU字型なら、何を見直しますか。
解答・解説
- 0.7です。
- 自由度10なので4です。残差標準誤差なら2です。
- 直線で平均的傾向を表すことが適切かを見直します。R²だけで判断せず、変数変換やモデルの形を考えます。