11. 確率変数と確率分布
何のために分布で考えるのか
Section titled “何のために分布で考えるのか”硬貨を4回投げたときの表の回数は、0〜4回のどれかになります。毎回同じ回数にはなりませんが、それぞれの回数がどのくらい起こりやすいかを整理できます。このように、偶然の結果に応じて値が決まる量を確率変数、値と確率の対応を確率分布といいます。
分布を使うと、一つずつ樹形図を書く代わりに、多くの繰り返しの確率をまとめて計算できます。また、標本平均がどのくらい変動するかを理解する基礎になります。
期待値と分散:起こりやすさで重み付けする
Section titled “期待値と分散:起こりやすさで重み付けする”離散的な値を取る確率変数Xでは、
です。 は期待値(平均)、 は分散、標準偏差は です。すべての値を同じ重みで平均するのではなく、それぞれの確率で重み付けします。
例えば公平な硬貨で、裏なら0点、表なら2点とすると、平均は0 × 1/2 + 2 × 1/2 = 1点。分散は(0 − 1)² × 1/2 + (2 − 1)² × 1/2 = 1です。1点という結果自体は起こりませんが、期待値は1点です。一度の結果を約束する数値ではありません。
二項分布:独立な成功回数を数える
Section titled “二項分布:独立な成功回数を数える”次の条件を満たす試行をn回行ったときの成功回数Xは二項分布に従い、 と書きます。
- 各回は成功・失敗に分けられる。
- 成功確率pが各回で同じ。
- 各試行が互いに独立。
- 試行回数nが決まっている。
は、n個の位置から成功するk個の位置を選ぶ数です。、 と約束します。
例題1:硬貨4回で、表が2回出る確率
Section titled “例題1:硬貨4回で、表が2回出る確率”公平な硬貨を独立に4回投げるので、n = 4、p = 1/2です。表が2回となる位置の選び方は6通り。一つの並びの確率は(1/2)⁴ = 1/16なので、確率は6/16 = 3/8です。
| 表の回数k | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 |
|---|---|---|---|---|---|
| 確率 | 1/16 | 4/16 | 6/16 | 4/16 | 1/16 |
平均は2回、分散は1。最も起こりやすいのは2回ですが、必ず2回になるわけではありません。各棒の高さがその回数の確率です。
チャートを読み込んでいます。数値は本文・表でも確認できます。
グラフの数値を表で確認する
| 表の回数 | 確率 | 確率(%) |
|---|---|---|
| 0 | 1/16 | 6.25 |
| 1 | 4/16 | 25 |
| 2 | 6/16 | 37.5 |
| 3 | 4/16 | 25 |
| 4 | 1/16 | 6.25 |
学習用のデータ・理論値。狭い画面ではグラフを横にスクロールできます。
少なくとも3回表は(4 + 1)/16 = 5/16です。平均は4 × 1/2 = 2回、分散は4 × 1/2 × 1/2 = 1です。
一方、戻さず取るくじは、前の結果によって成功確率が変わるので、通常この二項分布をそのまま使えません。条件の確認を計算より先に行います。
正規分布:連続する値の山型のモデル
Section titled “正規分布:連続する値の山型のモデル”正規分布は、平均を中心に左右対称な釣鐘型の分布です。 と書き、平均が 、分散が です。標準偏差を第2引数とするソフトもあるため、表記の約束を確認します。
連続する値では、確率は曲線の下の面積で表します。曲線の高さそのものが確率ではありません。一点ぴったりの確率は0でも、区間に入る確率は正になります。
標準化すると、平均0・分散1の標準正規分布を使えます。
横軸は標準化した値z。−1.96から1.96の間の面積が約95%、外側は左右約2.5%ずつです。高さではなく面積を読みます。
- 青い領域:中央約95%
- 縦軸は確率密度。確率は面積で表す
チャートを読み込んでいます。数値は本文・表でも確認できます。
グラフの数値を表で確認する
| 範囲 | 確率(近似) |
|---|---|
| −1.96以上1.96以下 | 95% |
| −1.96未満 | 2.5% |
| 1.96より大 | 2.5% |
学習用のデータ・理論値。狭い画面ではグラフを横にスクロールできます。
例題2:正規分布表を使って範囲の確率を求める
Section titled “例題2:正規分布表を使って範囲の確率を求める”測定値が平均50・標準偏差10の正規分布に従うとします。40以上60以下の確率を求めます。40を標準化すると−1、60は1なので、、約**68.3%**です。
標準正規分布では、平均から標準偏差1個以内が約68.3%、2個以内が約95.4%、3個以内が約99.7%です。これは正規分布の性質で、任意の分布にそのまま当てはまるわけではありません。
分布表には、左側の累積確率 を示すものや、0からzの間の面積を示すものがあります。例えば なら、対称性から 、差は約0.6826です。丸めの桁によって末尾は少し変わります。表の見出しと図で、どの面積が載っているかを確認しましょう。
例題3:二項分布を正規分布で近似する
Section titled “例題3:二項分布を正規分布で近似する”公平な硬貨を独立に100回投げた表の回数Xを考えます。二項分布の平均は50、分散25、標準偏差5です。nが大きく、npとn(1−p)が十分大きいと、 に近似できます。pが0や1に近いなど偏りが強いと、近似精度に注意が必要です。
「60回以上」を連続分布で近似するときは、整数の60に対応する範囲の左端を59.5として扱う連続修正を行います。
約2.87%です。二項分布の正確な確率と一致するわけではありません。問題で近似法や連続修正の指定があれば従います。「40〜60回」の両端を含む範囲なら、39.5〜60.5に広げて考えます。
- 成功確率0.2で独立に10回試行する成功回数の平均と分散はいくつですか。
- 平均100・標準偏差15の正規分布で、130は標準化するといくつですか。130以上の確率はおよそ何%ですか。
- 二項分布の「Xが5以下」を正規近似するとき、連続修正後の上限はいくつですか。
解答・解説
- 平均10 × 0.2 = 2、分散10 × 0.2 × 0.8 = 1.6です。
- z = (130 − 100)/15 = 2、上側確率は約**2.28%**です。
- 5.5です。5という整数に対応する区間を含めます。
品質管理での活用
Section titled “品質管理での活用”QC検定3級の正規分布では寸法の規格外確率、二項分布では検査した品物の不適合品数を計算します。p・np管理図へ進むと、一定の率でも観測数が変動することを工程監視へつなげられます。