STP分析とは
今回は「STP」について解説します。
STPとは、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの略で。
簡単言えば、市場を細分化して、目標を絞って、自分の居場所を決める、というものになります。
前回のSWOT分析では、自社内部の強み弱みを認識し、市場や世界情勢などの外部環境にどう対応していくかを考えるためのフレームワークについてご案内しました。
ただ、この環境分析を行うにあたり、自社がどの市場にいるか(もしくは、どの市場に居たいか)を正確に認識していなければ、正確な分析を行うことができません。
そのため、STP分析で自社が置かれている場所を正確に捕らえ、どのように自社のブランドを際立たせるか、もしくは自社の居たい場所を作るためブランドをコントロールしていく必要があります。
- S:Segmentation 日本語では「市場細分化」と呼ばれ、主に自分の戦っている市場を更に分割して考える項目です。(本件)
- T:Targeting 目標となる市場や、目標となる顧客を決める項目です。
- P:Positioning 自社や自社の製品・サービス・ブランドなどが、どのように見られているか、どのように見せたいかを決める項目です。
今回は、この中の Segmentation について、解説していきたいと思います。
STP分析の前のGCS分析
STP分析を行う前に、GCS分析を行っておきましょう。
これは簡単です。
- G: Genre(ジャンル)。ざっくりとしたジャンル分けですね。被服小売業、飲食業、不動産賃貸業等々…
- C: Category(カテゴリー)。被服小売業なら、紳士服なのか、レディースフォーマルなのか、飲食業なら居酒屋なのか、カフェなのか等々…
- S: Segment(セグメント)。市場細分化分析です。この段階でセグメント分析に移ります。
セグメンテーションとは
大前提として、特に大量生産・大量消費されるような商品ではマス・マーケティングとよばれる非常に広範囲な市場で戦うことになりますが、そこは基本的に大企業が戦うフィールドで、中小企業が大企業と同じ場所で戦うには無理があります。
セグメンテーションとは、そんな広範な市場を、共通の特性やニーズを持つ小さなグループに分けるプロセスです。
このプロセスにより、企業は次のターゲット市場に対してより的確で効率的なマーケティング戦略を展開することが可能になります。
セグメンテーションの重要性
では、何故このセグメンテーション(市場細分化)が重要になるのでしょうか。これには、以下のような理由があります・
-
顧客ニーズの理解がすすむ
市場の中には様々な顧客がいます。
顧客の多様なニーズや期待をより深く理解することができます。
これにより、商品開発やサービス改善の方向性を明確にできます。
-
マーケティング効率の向上
特定のセグメントに焦点を当てたマーケティング活動は、より高い ROI(投資対効果) を生み出し、無駄なリソースの削減につながります。
-
競争優位の確立
特定の市場セグメントでの強みを活かし、競合との差別化を図ることができます。これにより、特定の顧客層において優位に立つことが可能です。
-
製品戦略の最適化
セグメンテーションを通じて、製品やサービスのポートフォリオを最適化し、各セグメントに合わせた価値提案を行うことができます。
セグメンテーションの基準
セグメンテーションにはさまざまな基準があり、選択する基準によってアプローチが異なります。以下に主な基準を示します。
- デモグラフィック基準
- 年齢 : 年齢層によって、嗜好や購買行動が異なるため、製品やプロモーションをカスタマイズできます。
- 性別 : 男性向け、女性向け商品など、性別によるニーズの違いに対応。
- 所得 : 所得レベルに応じた価格設定や商品ラインナップを提供。
- 職業 : 職業によって異なるライフスタイルや購買力を考慮。
- 教育水準 : 教育レベルに応じた情報提供や広告メッセージの調整。
- サイコグラフィック基準
- ライフスタイル: アウトドア派、インドア派など、生活スタイルに基づく商品提案。
- 価値観: 環境意識が高い消費者に向けたエコ製品の提案。
- 性格: 冒険好き、保守的な性格に応じたマーケティング戦略。
- 行動基準
- 購買行動: 購入頻度や購入時期に基づくプロモーション。
- 使用状況: 製品の使用頻度や使用量に応じたターゲティング。
- ブランドロイヤルティ: ロイヤルティの高い顧客に対する特典や優遇策。
- 地理的基準
- 地域: 地域ごとのニーズや文化に基づいたマーケティング戦略。
- 都市規模: 都市部と地方部で異なる商品戦略や流通チャネル。
- 気候: 気候に応じた商品ラインナップ(例: 冬服、夏服)。
セグメンテーション分析の使用方法
以下は、セグメント分析を行うためのチェック表です。
かなり細かいので、詳細は上記のGoogle slideか、Zipファイルに入っているパワーポイントファイルで確認願います。
使い方はとても簡単で、該当する項目に〇をしていくだけです。
〇をする場所が、プロジェクトメンバーと噛み合っていない場合や、〇をつけたいが該当する項目が無い場合は話を行って下さい。
また、どれに〇を付ければいいか分からない時は、一番右の「未判定」に〇をつけておいてください。
丸をつけるために必要なこと
このセグメントチェック表を、プロジェクトメンバーの主観だけで行うことは危険です。
市場調査などを通じ、客観的な目線でも捉えることが重要です。
セグメントチェックを客観視する手法例
-
市場調査
市場調査を通じて、消費者のニーズや行動をデータとして収集します。これにはアンケート調査やインタビュー、観察法などが含まれます。
-
クラスタリング分析
データ分析手法の一つであるクラスタリング分析を用いて、消費者を自然に分けられるグループに分類します。この方法では、統計的手法を用いてデータのパターンを見つけ出します。
-
ペルソナ作成
ターゲット顧客を代表する架空の人物(ペルソナ)を作成し、具体的な顧客像を明確化します。これにより、マーケティング施策をより具体的に設計できます。
実際の使用方法
では、実際にこの表を使ってセグメント分析をしてみましょう。
仮の企業αが、新規に大衆向けアパレルブランドを立ち上げようとしています。価格帯は安めですが、服の種類を増やすことで、デザイン性や耐久力が高級品と比べて劣っていても、顧客が自分で選んだという満足度を高め、何回も購入してもらう動機を作っていく戦略です。
この新しいアパレルブランドが戦う市場は、どのようなセグメントになるでしょうか?
- デモグラフィックス基準の例
項目 | 詳細 | 理由 |
---|---|---|
年齢 | 10代~40代 | 価格帯が安めで、学生層や、育児に手間とコストがかかる年齢層をターゲットにしている |
性別 | 女性 | 男性もターゲットにしているが、どちらかと言えば女性に随伴した男性狙い |
家族構成 | 学生、既婚(子供あり) | 「年齢」と同じ理由 |
- サイコグラフィックス基準の例
項目 | 詳細 | 理由 |
---|---|---|
ライフスタイル | 都会派 | カジュアルより。アウトドア用品店とは差別化 |
購買動機 | 価格重視 | 安価でそれなりの品質を求める層を狙う |
態度・新年 | 楽観的、進歩的 | 特定のブランドなどに拘りが無い層 |
- 地理基準の例
項目 | 詳細 | 理由 |
---|---|---|
地域 | 郊外 | 家族連れをターゲットにするため、郊外の大型スーパーマーケットなどに隣接させる |
人口密度 | 中密度地域 | 駅近くよりも、少し離れた場所で家族連れを狙う |
交通アクセス | 車が必要 | 車で来店が必要な郊外に店舗を置く |
- 行動基準の例
項目 | 詳細 | 理由 |
---|---|---|
購買行動 | 頻繁に購入 | 品揃えを多くし、定期的に来店したくなるよう誘導する |
購買チャネル | ハイブリッド | 店舗で購入した顧客が、徐々にオンラインに移行するよう誘導する |
ブランド認知度 | 高い | 購買回数を増やすため、高いブランド認知度が必要 |
まとめ
セグメンテーションは、効果的なマーケティング戦略を構築するための基盤です。市場を適切にセグメント化することで、顧客のニーズをより深く理解し、ターゲット市場に対して最適な製品やサービスを提供することが可能になります。企業が市場での競争力を高めるためには、セグメンテーションのプロセスをしっかりと実行し、戦略的なアプローチを取ることが重要です。
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